何故、障がい者雇用をするの?

2008年に特例子会社アイエスエフネットハーモニーを設立して間もないころ、ある専門学校で生徒さんに向けた授業を行いました。卒業生がアイエスエフネットハーモニーで働いていることもあり、その社員とともに、どんな仕事をしているのか、どんな会社なのか、などをお話ししました。

授業の終わりに、質疑応答の時間を設けましたが、ある生徒さんが質問をされました。

「社長さんは、どうして私たちを雇ってくれるのですか?」と。

とっさに、私は、「あなたの好きな食べ物はなんですか?」と聞き返しました。

すると「ブロッコリーです」と、予想もしなかった回答だと思いながら、

「そうか、ブロッコリーが好きなんだ。でもどうしてブロッコリーが好きなの?」とまた質問しました。

「理由はありません。好きだからです」

「僕も、雇用するのに理由はありません。やりたいから、好きだから雇用するのです」

よく、ご父兄の方にも、経営者の方にも、「どうして、障がい者雇用をするのですか?」と聞かれますが、それは「やりたいから」です。

彼らはとても正直です。私が間違ったことをすれば、それを指摘してくれます。そして、彼らもまた成長するのです。

私は、ハーモニーの社員と定期的にお昼ご飯を一緒に食べるようにしていますが、私が机に椅子をしまわなかったり、ジャケットのポケットについているフラップが出ていなかったりすると、すかさず指摘が入ります。同行している社員やそこに居合わせた社員はさぞかしひやひや、そして痛快な思いをしていることと思います。ですが、私は正しいことを指摘されているので、不思議と嫌な気持ちにはなりません。社長であったとしても、誤っていることは指摘する、そのような素直な気持ちを持っている彼らと過ごす時間はかけがえのないものなのです。

ある企業向け説明会のとき、最前列に車椅子の男の子とお母さんが熱心に耳を傾けていました。企業向けとしていたので、おかしいなと思いながらいつもどおり説明、見学を進めました。会が終わり、その親子が気になっていた私は「何かありますか?」とお聞きしたところ、お母さんは私に1枚の紙を手渡してきました。

「これ、息子の作った経歴書です。今やっている仕事が書いてあります。今勤めている会社が事業を閉鎖するので、雇っていただけないでしょうか?なんでもやります」

この言葉に、私は心を打たれました。よくよく話を聞いてみると、当グループの営業が、その会社を訪問したことがあり、対応した方が会社のパンレットを取っておいたのだそうです。そして、事業閉鎖が決まったときに当グループのことを思い出し、それを手がかりに説明会にやってきたと言うのです。

息子さんは電動車椅子で、1人では食事をしたりお手洗いに行くことが出来ません。

どうしたら働いてもらえるのか、皆で考え、一般社団法人の設立を決めました。

そして、息子さんだけでなく、お母さんにも一緒に働いてもらうことを決めました。

開所式の時のお母さんの言葉は、今でも忘れることが出来ません。

「毎日朝起きて、行く場所があること、仕事があること。普通の人にとっては当たり前のことかもしれませんが、私たち親子にとってはそれがとても嬉しいのです」

一般的に考えれば、在宅勤務などがよいのかと思います。しかし彼らは、満員電車に乗り通勤をして働くことを選びました。

相手のため、と思っていても、実際にお話を聞いてみると、想像とは違うことがあります。ですから、ご家族との対話を大切にして、そのような機会を設けているのです。

今では、息子さんはパワーポイントを使って掲示物を作ったり、ブログを書いたりして仕事をしています。また、休みの日には自分で福祉タクシーを使って、自己啓発のためにPC教室に通ったりしているそうです。将来は、生まれ故郷に戻り、事業所を立ち上げ、そこの責任者になりたい、という夢も持っています。

お母さんは、他の障がいを持つ利用者の支援員として仕事をしてくださり、事業所内には欠かせない存在になっています。

私が、大学を卒業して入社した会社には、同じような人が多くいました。それが悪いとはいいませんが、今、アイエスエフネットグループには様々な人がいます。そのような方々と接することで日々学びがあり、気付きがあります。

以前、アイエスエフネットハーモニーが青山にあったころ、車椅子の男性が通勤していました。彼はとても努力家で、筋力が落ちないように、当時は電動車椅子を使わずに通っていました。アイエスエフネット本社から、青山一丁目駅までの道のりは車椅子1人で帰るにはかなり時間がかかります。ですから私も含めて、幹部社員がローテーションで駅まで送っていました。本社を出てすぐのところに赤坂郵便局があって、そこの前にはごみ置き場があります。歩いていれば避けることも出来ますが、車椅子の場合は、少しでも歩道にごみが出ていると通ることが出来ません。そこで、毎月行っている清掃活動(愛ぼら)の際に、ごみ置き場の清掃を重点的に行うようにしました。

また、車椅子ですから、階段を使うことは出来ません。大回りをしてエレベーターを使って改札まで行くと、駅員さんが改札を通してくださり、ホームに連絡を入れてくれ、そしてホームへ行くと、電車に乗るための渡り板を持ち、待っていてくださいました。彼が乗るときにも手伝い、電車がホームを過ぎるまで見送ってくださいました。それまで駅員さんたちにはあまり良い印象を持っていませんでしたが、何度か接するうちにすっかりファンになっていました。相手への印象ではなく、自分自身の態度が自然と相手の態度にも出ていたのだと後に反省しました。

このように、日々様々な方と接し、いろいろな出来事や出会いを通じて、気付きを得ています。多くの経験からの気付きで、人の優しさや思いやり、工夫を知ることができました。今の環境を、私はこれからも創ってゆきたいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

感想をお寄せください

Mail:c-o@isfnet.com