第28回 環境サプライチェーンと社会的責任

社会的責任と環境問題
~環境よりCSRを求めて~
≪欧州サプライ統計より≫

今回は、筆者が長く関係してきたヨーロッパのサプライマネジメント専門誌の記事から一部抜粋し筆者の意見も加えて報告する。

購買業務は、エネルギー、水、紙、化学品などの消費財においてコスト削減に取り組む場合、環境志向になることが多い。環境を意識して、節約を考えて、製品の部材や生産方法を変更する時、企業は価値の再評価とリサイクルに関与することになる。経済面で責任ある購買職は、中小企業のサプライヤーが戦略的な役割を果たすと理解しサポートする。これは中小の企業イメージだけでなく、外部関係者とのイノベーションは、購買方針なしでは完成しないからと考えたい。

1.グリーン調達は全方位作業

環境問題において、購買部門はエネルギー、水と紙の節約に賭けているようだ。同時に、植物性の原材料、リサイクルと循環経済にも照準を合わせている。購買職は、原価削減、及び価値創造と同義語の様々なプロジェクトに関与している。

≪図1:環境に関する購買の主要な目的は何か?≫

                        1. 55%=消費量を削減する
                        2. 21%=リサイクルする
                        3. 17%=製造工程を再考する
                        4. 7%=再利用、修理する

要するに次の様々な活動から環境保護に貢献することができるわけだ。

① 消費を少なくすれば、放出も少なくなる。

② 少ない水で紙も少なくなる。

③ 化学物質を減らし植物性を増やす。

④ ゴミを減らし、リサイクルを増やす。

⑤ 再使用を増やせば収益も上がる。

⑥ ゴミの4分の3以上を価値評価する。

2.ターゲット内の成熟度

社会的責任購買の最後のバロメーターは、優先度の高い資材の成熟度を上げること、動機づけ、進め方の抑制、工程の展開であると考えられる。循環経済においては、現実に実現すべき進歩などを常に考慮すべきと考える。以下のアンケート結果から責任購買の取り組みをしている回答者は8割だったが、そのうち68%は、規則、実例と良好な慣行を良く知っているとし、昨年より5点増えた。また、中小企業も環境に考慮し始めた結果が出た。このような中小企業では、また、総取得原価(Total Cost of Ownership)とリサイクルの概念が十分に普及していないこともわかった。

≪図2:優先度が徐々に高くなる進め方≫ 

1)回答者の42%が、責任購買方針は全社にとって優先を示す。昨年比で9点増えた。

2)回答者の48%が、他もある中の一つの要素だと回答し、首位を持続したが、昨年比では6点下げた。

≪図3:防御的・消極的な動機づけが減っている≫ 

1)回答者の49%は責任購買方針を実践しているが、企業イメージが首位3点の一つを構成している。

2)企業イメージ確保は、法規制・規格標準の遵守(43%)を越えている。

3)昨年より5点上がったにも拘わらず、顧客の要求に応える(17%)が最下位だった。

3.中小サプライヤーが発展できるように助成する

責任購買方針として、中小企業のサプライヤーを支えることが成功の鍵となることを見てきた。つまり、購買企業は、財務的成果、生産の効率卓越性、またイノベーションをうまく利用して、長期視点でサプライヤー関係性経営を発展させようと目論んでいる。

≪図4:TCO理論へ頼るのは未だ十分制度的でない≫ 

1)責任購買への取り組みを実施している回答者の85%の内、23%は製品の全コストを制度的に把握しているが、46%のみが時々把握で、20%が稀であり、全くないのが9%と出た。

役に立つ用語

1)中小企業へ関係性を評価するように依頼すること

2)進捗計画を申し込むこと

3)人的資源を支えること

4)中小企業に知ってもらうため助成すること

4.おわりに

日本では、グリーン購入法なるものが存在する。循環型社会の形成のためには、「再生品等の供給面の取組」に加え、「需要面からの取組が重要である」という観点から、平成12年5月に循環型社会形成推進基本法の個別法の一つとして「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」が制定された。同法は、国等の公的機関が率先して環境物品等(環境負荷低減に資する製品・サービス)の調達を推進するとともに、環境物品等に関する適切な情報提供を促進することにより、需要の転換を図り, 持続的発展が可能な社会の構築を推進することを目指すものだ。地方公共団体、事業者及び国民の責務などについても定めている。ここで、少し、言葉の定義を再確認しておきたい。次の二つの類似する用語は実際には紛らわしい。後者のグリーン調達が正に政府の制定した法律に適っているいるようだ。

グリーン購入

製品やサービスを購入する前に必要性を熟考し、環境負荷ができるだけ小さいものを優先して購入することである。消費者の観点でグリーン購入といい、生産者の観点ではグリーン調達という。

グリーン調達

循環型社会の形成のためには、再生品などの供給面の取り組みに加え、需要面からの取り組みが重要であるとの観点から、平成12年5月に循環型社会形成推進基本法の個別法の一つとして国等による環境物品等の推進等に関する法律(グリーン購入法)が制定された。グリーン購入法に基づき、公共工事においても、事業毎の特性、必要とされる強度や耐久性、機能の確保、コスト等に留意しつつ、グリーン調達を積極的に推進すること。

環境に優しい製品の購入を如何に判断するかについては、いわゆるグリーン購入ネットワーク(GPN)があり、そこでは4つに大別したグリーン購入基本原則を設けていることも確認しておこう。製品を購入する前に必要性を十分に考える。製品・サービスのライフサイクルの考慮資源採取から廃棄までの製品ライフサイクルにおける多様な環境負荷を考慮。事業者取り組みの考慮環境負荷の低減に努める事業者から製品やサービスを優先して購入。環境情報の入手・活用製品・サービスや事業者に関する環境情報を積極的に入手・活用して購入。環境情報として、どの製品で環境負荷が小さいのかに関する判断を助ける環境ラベリング制度がある。同様に、環境負荷低減に努めている事業者であるかどうかを判断する指標の1つとしてISO 14000もある。

様々な企業の取り組みが発表されているが、電気会社の例を一つ紹介すると、世界的に有名な某社では、会社とサプライヤーの間にある種の取り決めをしている。

『環境保全に配慮した製品作りにご協力頂けるサプライヤー様を「グリーンパートナー」と称し、21世紀初頭に制定した「グリーンパートナー基準」に基づき、サプライヤーに「グリーンパートナー」としての環境マネジメント体制作りと活動を依頼しています。』

同社の技術標準として、「部品・材料における環境管理物質管理規定」を定め、使用禁止や削減を図る環境管理物質とその用途を明確にし、これを施行した。これらの基準・規定を遵守してもらうための運用制度として「グリーンパートナー環境品質認定制度」を導入した。同社の製品に搭載する原材料・部品については、同社がグリーンパートナーとして認定したサプライヤーからのみ調達している。グリーンパートナー認定は、サプライヤーの開始・継続の前提で、認定後も2年毎に更新している。最後に、同社は、地球環境の保全が21世紀における人類の最も重要な課題の一つとして認識し、地球環境保全と持続可能な社会の実現に向けて、良き企業市民として積極的に取組んでいる、と締めくくっている。

日本での環境保護の課題は、多くの公害を経験した国の事情から世界的には非常に進歩していると言えよう。但し、この取り組みが持続的に発展していくかどうかは企業方針と経営トップの判断に負うところが多い。大きな失敗をした某電気会社では社員全体に根付いているが、そうでない産業では、まだまだこれからという声も聞こえる。社会的責任調達では世界的に見ればあまりにも多くの要素が複合しており全てを網羅するのは時間がかかる、従って、要素の一つである、環境または安全・衛生から社内に根付かせることから始めるのは如何だろうか。グローバル経済社会では、この2点だけでも相当な努力と一層の投資が要ることも十分了解する必要があるのは、当然のことである。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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