第27回 都庁組織に購買部署を

東京都知事の海外出張経費
~都庁内に存在しない購買集中センター~

今回の「東京都知事」に関する疑惑で都民が驚いたことの一つに高額な海外出張旅費が挙げられる。例えば、東京都知事ら20人が、2015年10~11月にパリ・ロンドンを視察に掛かった海外出張費が総額5042万円にのぼったことだ。同年にはパリ・ロンドンのほか、ソウルを訪問し合わせて約5,700万円を費やしていた。

パリ・ロンドン訪問は、パリ市長と意見交換やパリ・イル・ド・フランス地方商工会議所での講演などを通じて「東京」の魅力をアピールすること、ロンドンでは市長との意見交換、ラグビーワールドカップの3位決定戦と決勝戦と大規模スポーツ大会の運営状況などを視察することで2019年に日本で開かれるラグビーワールドカップと2020年の東京五輪・パラリンピックの参考にすることが目的だったという説明。

また、2015年10月19日~20日(1泊2日)には韓国・ソウルを訪れ、総計11人で約645万円かかっていた。様々なネットには、こうした東京都の海外出張費が高すぎるのではないか、税金のムダ遣いだと取り沙汰された。

勿論、議会で決議され必要な出張は容認されても良い。筆者がここで問題にしたいのは出張旅費の購買契約である。

もともと日本の政府、自治体などの組織には購買センター(購買を一括して取り仕切る部署)という組織がない。都庁の組織は以下の通りであるが、それらしきものを調べてみると財務局が該当する。

東京都の組織(該当する一部のみ)

○知事部局

局名

電話(広報担当)

主な事業

総務局

03-5388-2317

文書、法務、行革、情報システム、公立大学法人の運営の支援、
人事、区市町村行財政、危機管理、統計、人権施策

財務局

03-5388-2611

予算、契約、財産の管理・処分、土地の取得、庁舎の維持管理、
施設工事の進行促進・技術的支援

財務局の概要を見る;
財務局は「予算その他の財務に関すること」という都政を進めるなかでも大切な機能を所管しています。この予算の編成は東京都の事業を財政の面から総合的に調整するものです。その他、財務局では、公有財産の管理・総合調整や、契約、施設の建設等の事務を集中処理することを通して、各局が実施する事業が円滑に推進できるようサポートすることを基本的な役割としています。具体的には、知事の方針に従って予算編成を行い都議会の議決を得ること、都財政の中・長期計画 の作成や、都が必要とし、かつ都民の貴重な財産となる土地や建物などの管理・処分などを行っており、財務局は、各局を側面から支えています。

それでは局の組織の内部を見てみよう。

経理部 総務課 局事務事業に係る庶務、文書、予算・決算事務、広報広聴事務、局所属職員の人事事務、契約制度、電子調達、特定調達公告版の編集、並びに自動車の取得、管理及び配車などの事務を行っています。
契約第一課 土木工事、建築工事、設備工事、船舶の製造及び修繕の請負契約などに関する事務を行っています。
契約第二課 物品の買入契約、機械等の製造及び印刷その他の請負契約並びに委託契約に関する事務を行っています。
検収課 工事、製造等の請負契約及び委託契約に係る検査並びに物品の買入れ契約に係る検査に関する事務を行っています。

契約第二課が、物品の買入契約、機械等の製造及び印刷その他の請負契約並びに委託契約に関する事務を行っているとある。ここまでは、一般に民間企業とあまり変わるところはない。いわゆる購買部門が経理部に属するということだ。しかし、業務内容はいささか異なると見て良い。物品の購入には、サービス(用役、保全)が記されていない。更に「契約に関する事務」とあるため、帳票のみを処理しているようにしか見えない。購買センターなどでは売り手と買い手が明確になり、責任を伴うが、事務という記載では契約本体の責任者が不明瞭である。

また、今回の出張に伴う旅費交通費は対象外と推定する。それは、民間企業でも同じだからだ。外資系との大きな違いが見て取れる。今回の高額な出張経費は、領収書の明細が黒く塗りつぶされているため明らかではないが、次の項目をしっかり確認する必要があるだろう:

  1. 契約主体:買手と売手の責任者名
  2. 契約内容:契約書の存在(注文書と注文請書で良い)
  3. 契約金額の決め方:誰がいつどこで誰と合意して決めたのか
  4. 出張先での契約と支払い方法
  5. 売手の選定:専門用語ではサプライヤーの選定というが、契約前の準備工程が見えない。

どこの役所も闇雲に契約するわけでなく、準備段階があるはずで、都庁では、政策企画局が都の行財政の基本的な計画及び総合調整、重要な施策の企画立案、報道機関との連絡調整、都市外交の推進するため、出張経費の依頼元となる。民間企業で言うところの、購入依頼元である。購入対象を決め予算に則り購入依頼書を「購買センター」(ここでは財務局経理部契約第二課)宛に発行する。そして、同センターは依頼内容を基礎に最適なサプライヤー(旅行代理店、航空会社、ホテル、通訳など)を調査して、競争見積りを取り、査定した上で、予算内に収めるべく、選定したサプライヤー会社と交渉して契約書にしたためる。

民間企業では、サプライヤー発掘が最も重要な仕事であり、ここで躓くとすべての契約がひっくり返るくらいの危機的な作業であるが、役所では往々にして手もみのサプライヤーに足元を見られる傾向がある。

日本国独特の現象で、日本のサプライヤー、例えば旅行代理店などは、役所の担当者(それなりに決定権のある者)に近づくのがうまい。かゆいところに手が届くように担当者の弱みに付け込み、受注できるように計る。問題は、何故担当者が特定のサプライヤーに靡くかであるが、担当者の人手、時間が極端に欠乏しているからに尽きない。購入依頼元の度重なる変更が大きな要因であろう。予算を握っている依頼元は、それなりに強いが、寧ろ、出張者の行動や日程調整に振り回されることが多い。それならば、全て出張者が自分で旅行代理店と交渉し、調整することが手っ取り早く、事後報告で、契約課は「事務処理」のみに没頭する事態となる。これは日本企業では大変しばしばあることだ。所謂、計画性がない事案、出張だからである。

組織や団体も購買の基本は使う人、買う人、お金を払う人の三権分立である。それぞれ独立していないと企業統治が守れないが、果たして現実に守られているかどうか疑問である。つまり、使う人が買って支払ってはいけないのが組織であるが、「効率性」を盾に企業行動規範から外れる人が多い。

民間でも、すぐ買ってくれ、納期が間に合わないという言葉をしょっちゅう聞く。計画性のないのが恥ずかしい。予算を策定する際には、それなりの理由があり、相当前に準備ができている。購買センターは、それよりも前に情報を掴み、サプライ市場を調査、研究する。この普通の工程がしばしば、いや非常に多くの場合、踏まれないことが問題である。

最近、訪問したフィリピン購買学会で同政府の官僚と交流した。この政府官僚は、共和国政府組織内に購買センターがきっちりと統合され、整然と稼働している。しかも、ITに強い若い役人が積極的に関与し組織統治を守っているという。

As one of the eight founding states of the Open Government Partnership, the Philippine government is committed to open governance through initiatives such as this website.

Data.gov.ph aims to make national government data searchable, accessible, and useful, with the help of the different agencies of government, and with the participation of the public.

This website consolidates the datasets of different government agencies, allowing users to find specific information from a rich and continuously growing collection of public datasets.

Data.gov.ph provides information on how to access these datasets and tools, such as infographics and other applications, to make the information easy to understand. Users may not only view the datasets, but also share and download them as spreadsheets and other formats, for their own use.

The primary goal of data.gov.ph is to foster a citizenry empowered to make informed decisions, and to promote efficiency and transparency in government.

ご存知のように、同国では長い間、汚職、贈賄が蔓延し、政府の物品調達が問題視されてきた。情報技術を駆使して、マーベリック購買(MAVERICK BUYING)ができないように仕組んだのである。

Maverick Buying

Maverick buying or wild purchase is a term out of supply management. One talks about maverick buying when a department buys materials or services independently, without incorporating the purchasing department. In other words, maverick buying is the purchasing outside of standard procurement processes. Maverick buying, for example, is when employees buy office articles at the local store around the corner instead of from the supplier with whom the company has negotiated a framework agreement and, therefore, specific discounts. Maverick buying makes the agreement with the supplier more expensive because the volume of the framework agreement is decreased or the goods are purchased at too high a price.

Consequences of Maverick Buying  結果として次のような悪影響を及ぼす

  • Missing price comparisons
  • Multitude of different suppliers
  • Higher prices due to missing or badly lead negotiations and smaller quantities
  • Missing framework agreements

今回の案件はマスコミがこぞって取り上げた。多くの知事経験者も出てきて持論を展開したが、基本は購買行動倫理というべきもので、前述の三権分立ができていない組織こそが、厳しい第三者なのである。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

資料ダウンロード

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ 0120-818662 受付時間:平日 9:00-17:00

国際貨物専用ダイヤル 0120-18-9595

貨物追跡サービス

GOAL