第25回 ヨーロッパ購買概況2016年(1)

~首位250社 L’etat des achats en 2016~

筆者が編集委員を務めるLDA (La Lettre des Achats:ヨーロッパ購買ニュースレター誌)から興味深い記事を抜粋し紹介する。

LDA編集部の調査では、購買対象範囲カバー率、業績成果指標、購買部長へ結合機能、経営委員会での存在、または購買委員会への総務部長の存在に関して、購買運営組織の成熟度合いが堅固であるという構図が確認できている。これは、良い傾向であり、さらに進歩がみられるとされた。

順に調査結果を解説する:

1)購買の成熟度

1-1) カバーすべき購買対象の科目範囲(現行で部門が取り扱っていない購買対象科目)

欧州企業(製造・非製造とも)購買部門でカバーされていない対象科目の順序:

74%:銀行経費
71%:税金
69%:法務の賦役サービス
58%:会計監査役費用

一方で、輸送、燃料、情報・電気通信、旅費を扱っていない購買部門は5%以下しかない。

1-2) 財務部門から認められている購買成果

購買部門のパフォーマンスの評価は企業間で異なるが、概ね、どの企業も自社の財務経理部が購買機能の成果をどのように見ているか、評価しているかが大切だということ。

56%:予算に組み込まれている節減額
30%:全社から合意されている節減額
14%:財務部門から認められていない節減額

1-3) 財務上の節減額以外で認証される指標

購買機能では、当然、数値で表せない成果もある。しかしながら、財務部門はそういった成果もきちんと評価対象としている。

70%:サプライヤーリスク
67%:社会的責任
66%:品質
62%:支払期間

一方で、中小企業サプライヤーとの購買取引の比率、ニーズの標準化活動については、25%以下と出た。

1-4) 仏企業を対象とした調査だが、サプライヤーの国籍はフランスが多数を占めている:購入先の地理上の内訳

1-5) 購買機能の成熟度が多様化している

製造業では、購買部長の18%は、自社がレベル5(部材の共同開発など)に達したと判断している一方で、47%はレベル4(サプライヤー進捗計画)と評価、25%はレベル3(総取得原価主義:TCO)。サービス産業では、レベル5には10%程度で、レベル4は34%、レベル3(サプライヤーパネル囲い込み、TCOへの取り組み)は39%となった。

1-6) 購買部長に結びついている部門

社内のどういう機能部門が購買部としっかりした関係を持っているかの調査だが、

製造業では、

49%:総務部門(会長、社長、総務部長)
29%:操業部門

一方で、財務部や補助部門が低い結果となっている。
非製造業・サービス業界では、43%が財務経理部長に結びつき、総務部門には22%、補助部門は21%となった。

1-7) 購買組織構造の大部分は、折衷型とマトリックス型。

しばしばテーマになる要素が組織構造である。

  • 集中購買型
  • 分散購買型
  • 折衷型
  • マトリクス型:最近の傾向で行列組織運営、事業部と機能部が交差する構造。(後段参照)

製造業の48%の企業は、本社内に中央購買部を置き、支社や地方には購買者を配置するという折衷型が多い。マトリックス型を加えると実に62%となる。集中型は1.5ポイント増えて30.5%へ上昇したが、一方で、分散購買型は5ポイント下げて8%に過ぎなくなった。サービス産業では、中央購買組織タイプが35%と増える傾向だ。銀行と保険会社、また半分以上の化学・建材分野である。エネルギー産業は分散型27%が多い。

マトリックス組織

網の目型の組織形態で、従来の職能別組織にそれら各機能を横断するプロジェクトまたは製品別事業などを交差させたもの。購買担当者が自己の専門とする職能部門と特定の事業を遂行するビジネスユニット部門の両方に所属する組織であり、プロジェクトに対する管理上の責任と専門技術上の責任を明確に分離することによって、単純なプロジェクト管理組織の難点を解消するように設計された形態。情報の流通が大きくなる長所がある一方、各担当者が複数の上司から指示を受けるワンマン・ツーボスシステムのため、命令の一元化の原則に反し、組織が混乱することがある。

2)戦略:まず先に交渉することと供給源を探すこと

購買部長のリーダーシップにより、組織内の階層制度は進化している。これまでの購買機能、交渉、ソーシング、競争入札は、上流志向購買とニーズの再定義にとって替わる傾向がある。効率性の追跡、また結果至上主義がしばしば側面援助しているようだ。

2-1) 交渉とソーシングが戻ってきた

昨年に比べ、交渉と再交渉が3%増えて13%の第一位となった。第二位はソーシングと競争入札で12.1%となり、相変わらず強い。

上流志向の購買姿勢は1%減ったが3位につけた。また2011年から1位だったニーズを基礎に購買する業務は4位(9.3%)に落ちた。一方で、総取得原価(TCO:後段)の原価最適化購買は5位に入った。

TCO (Total Cost of Ownership)

「総保有コスト」または総取得原価のこと。ある設備などの資産に関する、購入から廃棄までに必要な時間と支出の総計。予算を作成し要求する際、ランニングコスト(保守・運用・維持等のための費用、例として設備・システムなどのメンテナンス、有償の更新、管理のための人件費、光熱費など)のために必要な経費を考慮に入れず、初期投資額(イニシャルコスト)だけに注目しがちである。 この概念は、それらすべてを含めた経費で、実際に支出すべき金銭の全額にあたる。 また顧客に対して、一部の製品・サービスのコストアップがあったとしても、全体の生産活動ではコスト削減になるということ。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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