第20回 メークインインデイアの実際

インドがおもてなし INDIA rolls out the red carpet

~変わりゆく南アジア~

今回は、昨年のインド首相来日以来の、日印相互信頼関係について考えてみたい。

インドの新首相就任以来、同国が世界の製造会社に向けて歓迎の意を表している。巧みな宣伝ロゴと受けそうな文言「Make-in-Indiaメークインインディア」を駆使して製造業を標榜している。大量の若年労働力、低賃金、堅固な技術基盤に加えて、今や政府の強固な後押しもある。

インドは1994年から2008年まで同国の経済を活気づけてきたサービス産業とともに歩んできたが、ここにきて同国は世界で二番目に人口の多い国として億単位の仕事を増やす必要を訴えている。米国の経営関連の研究所の報告によると、インド経済の将来性について、低生産性の農業の労働力が弱まり、製造業が小さ過ぎて雇用と国内総生産に寄与していないと懸念しているとされている。但し、比較的若い人口構成から将来の成長には最良の潜在性があり、豊富な労働に投資する製造業を育成する同国の能力に期待しているともある。この研究報告書の共著者である大学教授は、インドを製造業の原動力にするには、次の四つの改革が必要だと提案している:

  1. 事業環境を改善する
  2. 社会基盤を改善する

  3. わずらわしい労働規制を緩和する

  4. 政府内の重要な改革を遂行する

政府は、これら四つの厳しい改革を実行するあらゆる手段を持っているし、またインド経済を再点火することもできるとしている。若い労働者の人口構成こそインドが経験でき実現できる最後の好機であり、持続する高度経済成長は、拡大する製造業を通じてのみ実現するとしている。

米ビジネススクールの某教授の話では、モディ政権は、同国が製造ハブになる準備をしていると論じた。ある研究データでは、過去15年で同国は、インフラ(社会基盤)にGDPの4.5%を支出したが、中国は9%、中南米は2%弱と出ている。さらに、インドは2016年にはGDPの5.5%支出すると予測している。また、サプライマネジメント(購買・物流)実務者こそインドのインフラ社会基盤を二つのバケットで評価すべきとも言う。

一つ目は、電気通信、光ファイバー、衛星。これらは、インドが強い分野で過去10年、15年世界級であったことからIT王国になった事実。二つ目は物理的製品の移動、つまり高速道路、鉄道、電力で、インドがかなり弱い分野だ。

インド政府は、現在キャンペーンを通じて民間投資を奨励している。2014年10月の世界銀行によるインド開発報告では、道路妨害、通行料、他の障害を半分にするだけで輸送時間が20-30%削減でき、物流費が30-40%減少するとしている。こういったインドの製造業成長の障害にもかかわらず、世界の多国籍企業はインドの巨大な市場潜在性を無視できなくなってきたようだ。2015年世界のEMSリーダーの会社が、インドの一地方州にて今後5年間で50億ドル支出し、研究開発とハイテク製造施設を設置すると公表した。これは同州に5万人の雇用を創造することに匹敵する。

筆者の友人であり、現在インド・サプライマネジメント協会の会長は購買調達職が考慮すべき課題を次の通り、いくつか挙げている:

1)成長と市場の潜在性

世界銀行のインドGDP成長率は今年7.5%、2016年は7.9%、2017年は8%と予測されている。次の2年で世界の最速成長経済国として中国を追い抜く方向に進んでいる。最近の中国の経済混迷で、数社が同国でのグローバル製造戦略を再評価し始めているのが一つの指標だ。世界で首位3か国の成長経済国となり、2020年までには製造業の目的地の首位3か国に入ると期待されている。

2)規則正しい挑戦課題と機会

メークインインド運動で規制が変わることを購買調達実務者は知るべきで、規制変化がもたらす投資と事業活動の分野で特に機会をつかむべきだという。同サイトには政策の項で外国直接投資、知的財産権、国家製造などの分野で新規工程と政策を詳述している。

3)サプライマネジメント技能

インドではサプライマネジメント職が増えているが一方でサプライチェーンを担うリーダー達は戦略的能力を持つ上級職のプロ集団の不足に直面している。ISMインド協会はCPSM資格保持者を懸命に増やしている、そして製造業でのサプライチェーンにとって重要なスキルを修得するように努力している。インドのCPSM保持者数は第5位だが、すぐにカナダを抜くという。製造や産業分野での競争力を維持するには価値連鎖を通じて協調、協働できる高度な技能を持つ実務者が必須だという。

インド国の持つ、巨大な人口、多様な技術レベルと才能は、同国の労働市場に面白い構図を描くだろう。企業は、またエンジニアと管理職の才能が例外的に強いと見ているのも事実だ。しかし、製造業に必要な職業技術はそれほど強くないのは、独立後、国のリーダーは高度な教育制度を築いたが、職業スキルには注目しなかったからだ。弱点を見過ごすことなく、モディ首相は職業スキル向上を今回の運動の柱としている。政府は製図業の従業員のニーズに応えるために職業訓練に集中した国家規模の多様な技能ミッションを開始した。インドの労働力の2.3%しか正式な技術訓練を受けていないという。米国52%、韓国96%に比べると恐ろしく低い数字であることがわかる。

もう一つ忘れてならないのは、この国は、世界で防衛軍事装備の最大の輸入国であることだ。これまで、防衛製造業は国家所有の企業であったが、政府は最近民間へ門戸を開放した。モディ政権では、外国の防衛企業は単に武器を売るだけでなく製造することも考えて欲しいと言っている。防衛産業は、海外企業がインド企業と合弁を組む意思があることからインドでは重要な製造分野になると見られている。民間への開放は国内製造能力を引き上げ、長い目で見れば輸出産業を強化することになろう。即ち、民間企業との合弁が成功すれば同分野のサプライヤーも育っていくだろう。

一方で、消費者電子分野、特にスマートフォン部門はインドの巨大な市場に参入することで成長が期待されている。また、インドは、スマート電話市場で世界3位にあり、2017年までに第2位になると見込まれている。再三に亘って、政府は中国から輸入せずにインドで製造してくれと訴えている。フォックスコン社の計画では、主要な製造企業が興味を持っているようだ。現在インドは半導体チップの製造では未だ大きくなく、輸入に頼っているが、規模が大きくなればサプライヤーもインド国内で製造する妙味が出てくる。インドは中国と似た道を歩むと期待されている。

このように本コラム冒頭に掲げた「メーク・イン・インド」運動は、インドの強固な自動車分野の強みを発揮することも再三述べている。世界級の自動車会社が投資して国内需要を成長させて、その後。競争優位を得て輸出主導の生産基地になるという構図だ。さらにもう一つにインドの自動車産業成長の鍵となる要素は同国の強固なエンジニアリング力と環境・生態系技術であろう。多くの企業が研究開発拠点をインドに設けているのは強固な技術才能と低所得だが製造業のイノベーションはインドにとって重大で決定的な鍵となるだろう。

インドは世界銀行のビジネス遂行格付けで189か国中142番目である。(The World Bank Group’s Doing Business ranking) つまり、世界中でもビジネスがしやすい国を意味する。特に中国と比べてもインドは知的財産権保護と契約の論点からも多くの優位性がある。つまり、インドには、知的財産権を扱うための十分確立された法的、司法上の、管理上の制度があり、知的財産権を保護する国際協定にも加盟している。つまり、インドには西洋式の民主主義と国家政府があるため、大市場の急速な成長に問題なく重要性が加味される。

≪サプライマネジメントの到達点≫

インドとしては世界の多国籍企業が同国内に製造拠点を設けるように誘致を惜しまないが、一方で購買実務者が企業目標に達するように支援する計画も求めている。世界のビジネスリーダーたちは、そのサプライチェーンが競争優位を勝ち取るように支援をすることを期待している。インド国内に製造拠点が移れば、実現可能だろう。

サプライチェーンのゴールは次である:

  • 競争優位を供給すること
  • コスト効率性を高めること
  • 高度なサービスを提供すること
  • 品質を改善すること

ゴールに照準を合わせれば、購買実務者は全社の価値連鎖に集中せざるをえない。物流と在庫コストを節減するにはインド現地のサプライソースを特定することだ。

次の項目に焦点を当てることでサプライマネジメントを進化させることができる:

  • 内部事業提携者と価値連鎖を通じて協力する
  • リーン生産の主原則;プル補充システムを実行する
  • 科学技術と自動化の選択を進める
  • サプライチェーンを通して上市の速度を改善する

サプライチェーンを通して企業は市場への参入を得て、それからインド国内に輸出基地を設立することが可能だが、その進化は業種と成熟度に因るものだ。2015年世界銀行の報告では、急速な輸出成長の潜在性は需給の両方で制約されているとのことだ。供給側から見ると、インドの製品輸出は、世界輸出の成長と足並みを揃えることができなかった。需要側では、世界の輸出市場は頂点に達したように見える。加えて、インドは、世界の巨大な輸出者との間で自らを開拓するために製造業の競争優位性を大きく高める必要がある。また、インドの製造業の成長はここ5年間で巨大な国内市場の消費に照準を合わせるだろうと期待できる。中国も製造業の成長時には75から80%は国内向けだった。中国からの部品輸入ではインドの競争力は向上しないとみている。

インドの「Make in India」運動は、政府の約束を見える形での証明であり、製造企業を引き付け、雇用と職を創造し、経済成長につなげる意味がある。このキャンペーンは、単にインドを低所得労働の市場にしたり、国内総生産を上げるだけのものではない。インド成長の政策は、効果的なサプライ網を加速させるために中核となるサプライチェーン戦略を基礎とするべきである。インドは来たる数年で製造の中枢になるべき偉大な潜在能力を持っているのだ。

【参考情報】

Make in India メイク・イン・インディア

「Come, Make in India!(インドに来て、インドで作ってほしい)」これは、過去数十年の歴代の首相が発表した宣言の中でおそらく最も重要なものだろう。2014年8月15日のインド独立記念日にモディ首相が行ったインドの変革の必要性に関する演説の中で、産業界、投資家、更に最も重要なインド国民たちが長年求めていたことを話した。モディ首相が2014年9月24日に正式に”Make in India(メイク・イン・インディア)”政策を発表した際に、世界中がインドに対してこれまで持っていた “官僚主義”的なイメージを、”赤じゅうたん(外国資本からの投資を盛大に歓迎という意味)”的なイメージに変える必要性とともに、競争や公平な取引を促すような環境を世界の投資家や企業に提供することを強調した。モディ首相は「投資家は、短期的な投資インセンティブではなく、継続的な成長環境や安全性を重要視して投資判断を行うだろう。我々は投資家の投資を無駄にせず、そのための安定的な政権運営を保証する。」とモディ首相は付け加えた。

Make in Indiaとは 国内外の企業からの投資を促進し、インドを世界の魅力的な製造ハブに発展させることで、インドの高い経済成長率と雇用創出を目指すために、簡易的で効率的な行政を実現することを目的とした政策である。インド政府はこの”Make in India”政策によって、インドの製造業によるGDPシェアを現在の15-25%から60%に向上させることを目標としている。この国家政策は、投資促進、イノベーション育成、人材育成、知的財産保護、高品質の製造インフラ構築を実現させる取組みである。この政策には、外国企業による拠点設立を促し、インドを重要な製造拠点に位置付けるためのプロジェクトが含まれている。中国で様々なコストやリスクが上昇し、世界の製造拠点としての注目を失いつつあり、多くの大企業が中国の代わりとなる拠点を探しているという状況のなか、”Make in India”政策はインドの製造業を変革させ、従来のサービス産業によるインド成長ストーリーを書き換え、インド経済を成長軌道に戻すことが期待されている。

ヒンディー語/ヒンディー (हिन्दी)

インドの主に中部や北部で話されている言語。インドの憲法では連邦公用語。インドで最も多くの人に話されている。原語においては「ヒンディー (Hindi)」のみで言語を表す。なお、宗教を表す「ヒンドゥー」を用いた「ヒンドゥー語」は不適切、「ヒンディー」はヒンドゥ (Hindu) の形容詞形。本来「ヒンドゥ」とはインダス河(Sindhu)に由来し、ペルシア語でインドを意味する語であった。インドを統治したイスラーム系の王朝がペルシア語を公用語としたために、ペルシア語に対して「インドの言語」の意味で「ヒンディー」と呼んだ。ヒンディー語は、インド・アーリア語派に分類され、隣国ネパールで話されるネパール語などとも近縁関係にある。パキスタンの国語ウルドゥー語とは基本的な語彙や文法がほぼ共通しており、言語学的には同一の言語の二種類の標準化である。歴史的にはデリー一帯の言語をもとに、ペルシア語・アラビア語からの強い影響を受けてウルドゥー語がまず成立し、南アジア全体に広がった。その後、ヒンディー語がアラビア語、ペルシア語系の高級語彙をサンスクリット由来の高級語彙で置換させることによって成立した。なお、ヒンディー語にも基本語彙中にはアラビア語、ペルシア語の語彙がかなり多く存在している。日常生活では両言語の中間的な言語を使用しており、両者を総称してヒンドゥスターニー語と呼ぶこともある。現代ヒンディー語はインド英語とも影響し合って変化を続けている。インドでは、憲法の351条でヒンディー語の普及を連邦の義務としており、連邦の公用語をヒンディー語に統一する運動を進めているが、特に南部のドラヴィダ語圏で反対が強く騒動も発生した。このため 1963年の公用語法で、英語も公用語として使われ続けることになった。

ホームページ www.makeinindia.com メイク・イン・インディア:ポリシー項

1) New initiative 新構想

The Make in India program includes major new initiatives designed to facilitate investment, foster innovation, protect intellectual property, and build best-in-class manufacturing infrastructure.

2) Foreign direct investment 海外直接投資

India has already marked its presence as one of the fastest growing economies of the world. It has been ranked among the top 3 attractive destinations for inbound investments. Since 1991, the regulatory environment in terms of foreign investment has been consistently eased to make it investor-friendly.

3) Intellectual property 知的財産権

The Indian government has taken several initiatives to create a conducive environment for the protection of intellectual property rights of innovators and creators by bringing about changes at legislative and policy level.

In addition, specific focus has been placed on improved service delivery by upgrading infrastructure, building capacity and using state-of-the-art technology in the functioning of intellectual property offices in the country. This measure has resulted in sweeping changes in IP administration within the country.

4) National manufacturing 国内製造業の新興

The need to raise the global competitiveness of the Indian manufacturing sector is imperative for the country’s long term-growth. The National Manufacturing Policy is by far the most comprehensive and significant policy initiative taken by the Government. The policy is the first of its kind for the manufacturing sector as it addresses areas of regulation, infrastructure, skill development, technology, availability of finance, exit mechanism and other pertinent factors related to the growth of the sector.

【人物・組織概要】

  会社・団体  事業概要

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インド・サプライマネジメント協会

Institute for Supply Management, India (ISM-India)

based in Gurgaon (Delhi-NCR)

A not-for- profit association with Chapters in all major cities of India. ISM-INDIA is an affiliate of the Institute for Supply Management (ISM) in the USA which is the largest supply management institute in the world with membership base of more than 50,000 supply management professionals in 75 countries. ISM-India, in cooperation with ISM USA aims at providing opportunities for the promotion of the Procurement & Supply Management profession and the expansion of the professional skills and knowledge. The mission of ISM- India is to take leadership in setting standards, bench-marking, supply management professional development, be the voice of India supply management professionals to the world and be the government advocacy for procurement & supply management. ISM-India also aims to provide opportunity to network with colleagues in the area of procurement, supply chain management and logistics. The members also receive access to the extensive database of information, knowledge center and discounts on its products and seminars. The key business of ISM-INDIA is education, training and consultancy in the field of Procurement & Supply Management. One of its popular product is CPSM certification offered by ISM USA.

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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