第16回 調布飛行場での小型飛行機事故

数年前から経済産業省外郭団体の仕事で産油国幹部級の職員の研修を行っている。日本と産油国との友好関係の維持などが目的で資源のない国の責務というところだろうか。多くの産油国、特に中東諸国の幹部職員、社員は企業研修ということなので、自家用ジェット機で来日する。日本人にはなじみの薄い「プライベートジェット機」である。中にはUAEの王子や王族も来るためロングストレッチのリムジン自動車で大使館から研修所まで直行してくる輩もいる。ここで何が言いたいかというと日本には民間飛行機が少なく、その環境整備もままならないことだ。国土が狭いから飛行機は必要ないと言うのはもはや理由にはならない。

2015年7月26日午前ごろ、東京都調布市富士見町の民家に離陸直後の小型飛行機が墜落し、民家が全焼、周辺も一部が焼けた。全焼した民家にいた人と飛行機に乗っていた機長ら2人の計3人が死亡したという。国土交通省によると、住宅街に航空機が墜落して住民が犠牲になったという事故は、近年にはないという。当該の調布飛行場では過去にも、小型機が離陸直後に墜落する事故が起きている。周辺は戦後宅地化が進み、自家用機を含む航空機が住宅地上空を年間1万6千件超も離着陸する状況となっていた現実がある。しかし、ここで、小型飛行機は危ないから廃止すべきだという議論には決してならない。サプライチェーンや物流手段としても飛行機の価値は急上昇しているからだ。ヒトでなく貨物や資材の輸送を前提とすると、輸送手段には、陸海空、河川、液体輸送なども含めて次の5つの方法が用意されている。

昨年9月頃、本コラムの特別編で、「御嶽山噴火発生から物流リスクを考える」を投稿したが、その時、輸送手段の特徴について語ったことがある。それらは、取り立てて目新しいものはなく基本的で常識的に発想する手段、特色である。しかし、侮ってはいけないのは日本では政府や地方自治体の規制が厳しく民間が手におえない状況を作り出していることである。筆者が指導する某大学学部での流通の講義で、東日本大震災が発生した時にトラック輸送だけでは限界がある、陸海空を考えようと繰り返し述べている。今一度、企業内で、各々の物流手段を見直し、成果を検証することも良いのではないだろうか。次表に新しい視点を示すが、時代は確実に進化し、環境保護から社会的責任を含む持続可能な物流に移行している事実も認めなければならない。

手段

新しい視点

1

陸上

環境に優しいトラック輸送、レールとの協業、重機による道路整備

2

海上

河川や運河の利用、マルチモーダルシフト、コンテナ船

3

小型飛行機の利用、炭素繊維技術の発達による航空機の軽量化

4

鉄道

トラック便とのマッチング、高速鉄道、アセアン諸国への展開

以前のコラムで災害時の事業継続について重機車両や空便の必要性について語ったが、災害でなくても、今後、2020年東京五輪を前にして、国内では益々、航空輸送が必要になってくると予測している。それこそ、ヒト・モノを大切にする次世代の物流を検討すべき時に来ている。

一方で、今回の事故を受けて、東京都知事は、調布飛行場で自家用機の離着陸を認めないことも含め今後の対応を検討する考えを明らかにしたと言う。同日、調布、三鷹、府中の地元3市長が都庁を訪れ、自家用機の運航停止を視野に更なる削減を図ることを求める要請書を提出している。全く木を見て森を見ない典型で将来の交通や人の移動、貨物の流通を考慮していないと言うべきだろう。物流手段としての飛行機の利用が制約されるのは逆に大きな問題であろう。都庁さえも日本のグローバル化に反する行動をしているのは、理解しかねるが、市民の安全、安心をモットーに掲げれば丸く収まるという理念のなさであろう。オリンピックは東京都が主体だが、新国立競技場の財源問題も含め、政府の出番を期待する。

過去の資料を紐解くと、平成元年3月の東京都議会予算特別委員会において、当時の都知事が、調布飛行場は増大・多様化する地域航空の拠点として必要不可欠であると認識していると発言しているのがわかった。同年7月、東京都は突如、社会的情勢の変化と社会的ニーズから、調布飛行場が地域空港拠点として必要不可欠であるとして、飛行場の永久使用につながる都営空港化を提案した事実があった。この英断は非常に意義深いものと見て良いのではないだろうか。

教科書通りに考えても、5つの輸送手段にはそれぞれ利点と欠点がある、従ってそれらを考慮して利用するのが賢明なやり方である。飛行機は早いが高くて危ない、という結論を出したがる政府関係者は多いが、早い(輸送速度)は利点であり、高い(運用コスト)は欠点だろうが、三番目の危ないは、現実的かどうか疑問だ。他の手段との比較で考えてほしい。以下は先日、弊ISM機関紙講習会で紹介した記事であるが、関連する部分のみ抜粋する。

革新的な次世代飛行機開発

米国B社と欧州A社に対して、カナダのB社は、翼にニューカーボン複合材を使用して再設計、胴体にアルミリチウム合金を取り入れ、フライ・バイ・ワイヤシステムと電気ブレーキを導入し改良を加えた。この設計変更および新しいエンジンにより、飛行機の運用コストは15%改善し、大幅な燃料費の削減は産業の飛躍的進歩を遂げることができた。B社Cシリーズはナローボディの最新で従来のナローボディ機の常識を覆す革新的な次世代機。従来型に比べ大幅な軽量化と低燃費化を実現したCシリーズは、燃費で20%、運用コストで15%の向上を実現する。また環境面においてもCO2とNOx排出量の大幅削減や、従来型に比べ4倍の静粛性の実現など、都市型空港やLCCエアラインの運航を十分に考慮したまさに新時代の旅客機である。

実は航空機の技術はここ数年で格段に、また急速に進歩しているのである。軽量化と環境保護の両面からの技術開発が進んでいるので、飛行機の運用コストが高い、のはこれから非現実的となり、コストパフォーマンス(成果に対する費用)で考えれば、地理上の場所や総原価比較では逆転することもあり、技術ははるかに進んでおり物流に関係するビジネスパースンも真剣に比較研究することが求められよう。

そして、世界にはビジネスジェットと呼ばれるものがある。企業が所有し経営幹部や社員の移動のために使用する場合、個人が個人的な移動に使用する場合、国家の要人輸送、報道機関の取材機などに使われる。アメリカ同時多発テロ以降では、空の安全が疑問視されたことを背景にテロ標的とされる可能性の低いビジネスジェット機の需要は増大した。軍用機としても採用されている事が多く、従来、この場合は要人輸送機や捜索救難機としての任務が多い。一般の日本人には予想もつかないが、例えば、アフリカや中南米の大地で鉱山運営をする欧米各社の調達物流部長は自家用機を数台持ちサプライヤー調査はおろか、実際に資材を収集することもあると言う。彼我の差を考えてみたい。

また、米国の民間会社F社の保有する航空機は、子会社であるF・E社とF・F社の2社によって運航されている。この内、後者はセスナ208Bなどターボプロップ機の運航を担当している。物流会社ではあるが、貨物や資材の性状に合わせて色々な手段を使い分けて世界中にモノを運んでいる。日本の領土は狭くて小さい、島が少ないなどとは言わず、今一度コスト対成果を考え直し、将来に向けて最良の輸送手段を研究したいものである。因みに、同社は、保有機材数が2位の米国航空会社653機を越えて671機と世界の民間航空会社の中で最大の機材数を誇っている。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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