第13回 アフリカ中心の紛争鉱物

今回は紛争鉱物について考えてみたい。記事内容は筆者が代表を務める米サプライマネジメント協会(Institute for Supply Management)に機関誌インサイド・サプライマネジメントから許可を得て解説、注釈、加筆したものである。

1.はじめに

今日、科学技術を可能にする金属材料が大きな議論の話題と懸念になっている。つまり、地球上の少ない場所からしか採れないため紛争の種となっているのだ。これを紛争鉱物、英語では、conflict mineralsと呼ぶ。

これも最近の表現であるのは、フェアートレードが議論されてきた背景があるからだ。これらは主に紛争地域において産出され、鉱物を購入することで現地の武装勢力の資金調達につながり、結果として当該地域の紛争に加担することが危惧される鉱物ということから「紛争」が文字の頭に付いた。こういう場合、特にコンゴ民主共和国およびコンゴに接する国々で採掘されるところのスズ・タンタル・タングステン・金の4種の鉱物を指すことが多い。

この種の鉱物は、その採掘過程において武装勢力グループが関与し、取引高の一部が武装勢力に流れるため、結果的に武装勢力が力を蓄え、掠奪や暴力を助長する要因となっているものだ。これらの鉱物は、米国で2010年7月に成立した「金融規制改革法」において指定され、金融規制改革法の成立により米国の上場企業は該当地域から調達した鉱物の使用状況を報告する義務があるとなっている。指定されている上記の金属は、総称して「3TG」とも呼ばれ、コンピュータの電子部品の製造などに必要な鉱物資源であることから、欧米日本などの先進国での需要が高いものである。

鉱物の産出国は、コンゴ、アンゴラ、ザンビア、タンザニア、ウガンダ、南スーダン、ルワンダ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ブルンジの計10ヵ国。金融規制改革法そのものは、米国の法律であるが、米国の証券取引所に上場している日本企業も対象となるから注意が必要となる。2013年4月現在、日本国内では法律上の規制や義務などは特に課されていないが、電子情報技術産業協会(JEITA) などが中心となって責任ある鉱物調達の取り組みを推進している背景がこの法律にある。

ここで少し関連する用語を整理してみると下表のとおりである。

   キーワード  解説 備考

1

コンゴ民主共和国 アフリカの鉱物資源の宝庫 コンゴ及び周辺9カ国由来のものに限る
2 対象となる鉱物資源 金、すず、タンタル、タングステン 携帯電話・PC・ゲーム機等の部品材料
3 米証券取引委員会 報告と開示を義務付ける規則

2010年、ドット・フランク法(金融規制改革法)1502条に基づき制定

上場企業に対し、2013年1月から使用実態の報告義務 (罰則なし)
4 非人道的な行為 武装組織の資金源に

(内戦激化、治安悪化)

鉱山等での女性・子供の強制労働の状態化
5 紛争鉱物関連企業の社会的責任 部品や材料の調達で紛争鉱物の不使用を条件とする米企業

⇒サプライチェーン全体にCSRを求める

不使用を義務づけるのではなく、間接的に不使用を促すもの
6 部品や材料の調達網 多くの日本企業の対応が急がれる 不使用の証し
7 対策に乗り出す

対策費用

JEITA---EICC年間1兆円以上:調査・認証にかかるコストは誰が負担するのか問題。最終製品メーカーのコスト削減要求は厳しく中間製品メーカーは苦しい立場に立たされている 田中貴金属工業EICC認定取得
8 Foundation Kisengo コンゴ民主共和国のカタンガ地域で持続可能なコミュニティを作ることを目的に採鉱業者によって設立  

1.米国企業の取り組み例

次に紹介する米国KEMET社は、コンデンサーの製造会社でタンタル供給者、顧客、鉱山の市民労働者に対して同社の最良の関心は優先度と伝えている。2010年から”Making Africa Work”(今では社会的、経済的持続可能性のためのパートナーシップと呼ぶ)計画を実行することを約束している。この計画の独自性は同社が数年で達成したことにある。

企業概要 (KEMET Corporation)

項目  概要
創業  1990年
本社 2835 Kemet Way, SC, United States
事業内容 コンデンサ製造業
代表者 Per-Olof Loof (最高経営責任者 兼 取締役)
企業概要 米デラウェア州で1990年に設立され主にコンデンサを製造。コンデンサは電力や電流の蓄積、フィルタ、制限を行う電子部品で、同社は様々な原材料を用い、多くの異なるサイズや仕様のコンデンサを製造している。

2.価格変動という問題

タンタル鉱石はケメット社のコンデンサー事業の大きな部分を持つ。同社は世界最大のタンタル需要家でもある。最近の市場の脆弱性が投機筋に拍車をかけたため、1ポンド当たり100ドル以上価格がぶれた。同社は、タンタルのコスト構造をより多く統制し、また同サプライチェーンから投機的な要素を除くために検討を加えた結果、先の持続可能性計画に辿りついた。同社と同じ価値システムを持つ、コンゴ国内での鉱山操業を選択することが、主たる優先度である。これによりタンタルを取り巻く安定性と信頼性に対する長期的な経済的要求を満たすだけでなく、今後の鉱山領域に意義ある社会的影響力を及ぼすことができるのだ。

2010年に始まった、このKEMET社の計画は、サプライチェーンの合理化と社会福祉の定着という両方の成果をあげていることで有名である。

3. 閉ざされた、また垂直統合されたサプライチェーンの現実

規制と現行の商品相場の不安定性に焦点を当てて同社はタンタルのサプライチェーンを閉鎖的で垂直統合されたフローにするという決定を下した。

同鉱山は紛争から解き放されたという証明付きの採掘場になり、同社の求める高品質で高いグレードの鉱石というニーズに合致している。

4.コミュニティへの投資から利益を生む

同社は双方向で利益を得る形で最初の2年間で150万ドルをキセンゴ地区社会的持続可能性プロジェクトに投資すると宣言した。これらの投資資金の多くはインフラ改善に使われる。つまり、学校、病院、新鮮な水の井戸、道路照明、そして道路と橋梁だ。

5.おわりに

コンゴ民主共和国(DRC)及びその隣接国など、紛争が絶えない地域原産の鉱物が、人権侵害や暴力行為を行う反政府軍の武装資金源と化していることが大きな国際問題となり、OECD(経済協力開発機構)では、紛争地域及び高リスク地域からの鉱物のサプライチェーンにおいて人権を尊重するとともに、紛争への関与を回避するためのリスク管理を行うよう企業に求めている。

これらを背景として、2010年7月、米国「金融規制改革法」(ドッド=フランク法)が成立し、米国証券取引委員会(SEC)は、同国で上場する企業に対し、DRC及びその隣接国で産出される4鉱物(錫、タンタル、タングステン、金)について、その使用実績の有無や原産国の開示義務を課す規制を制定した。

日本企業で素材メーカーは、責任ある鉱物調達を目指し、紛争鉱物問題への対応をグローバルなサプライチェーンにおける重要課題と認識し、本法の主旨を踏まえた活動を強化している。特に、ステークホルダー全員と連携し、紛争鉱物不使用に向けた取り組みを実践しながら、深刻化する資金洗浄による紛争の助長を防止し、人権侵害や暴力行為への加担を回避するなど、より責任ある鉱物調達に向けた取り組みが求められる。

最終のゴールは社会福祉投資と自主的に持続できることだ。鉱山労働者から末端の需要家までサプライチェーン関係者のニーズに合わせることが同社の企業文化の本来のところだ。そしてこの取り組みは、経済と社会の両視点から実現できる証しである。これこそタンタル産業における真の包括計画とビジネスモデルと呼べるもので、ここに意義ある社会的持続可能性と経済的安定性を達成できるのである。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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