第12回 米西海岸港湾労働者ストとサプライチェーン遅滞

米西海岸の港湾労働者ストライキにより資機材の安定供給に支障が出たため、2014年12月に最大手ハンバーガーショップがフライドポテトの販売をSサイズのみとする決断を下してから既に5ヵ月が経過した。現在、アメリカでは海運会社などで構成する太平洋海事協会(PMA)と港湾労働者でつくる国際港湾倉庫労組(ILWU)が対立している状態にある。

アジア諸国からの輸入の70%を西海岸で取り扱うとあって、日本のメーカーにも打撃が加わることが判明した。米国マスコミは日本の自動車メーカーの受難を報じた。自動車メーカーA社の広報担当は、6ヵ所の工場で変速機や電子部品などの部品不足を理由に減産あるいは生産停止を決断する可能性があると発表した。自動車メーカーB社も北米での超過勤務を調整したと報告した。自動車メーカーC社のCFOは航空便への切り替えにより月々70億円のコストがかかると表明した。自動車メーカーD社は、現地での部品調達に依存しており現段階で影響は限定的らしい。

一方で、米国輸出業者からは更に悲痛な叫びが聞かれる。北米食肉協会によると輸出できずに貯蔵庫で眠り続ける肉類の保管料金が嵩み、1日当たり8500万ドルの損失を計上した由。農業は一段と苛酷な状況でリンゴやオレンジなど果物は廃棄を余儀なくされた。

20日深夜、新たな5年間の労働協定で暫定合意に達したこの合意によりストが解かれ貨物は動き出すが、ロサンゼルスやロングビーチ港が平常に戻るには数カ月かかるとみられる。ロサンゼルス港の運営会社幹部は先月、正常化には8週間を要するとの見通しを示していた。

一方、大きな港に荷を降ろした後の船が寄港することの多いオークランド港は大幅に取扱う貨物量が落ち込んでおり、ストが終わっても元には戻らない可能性もある。海運会社がスト解消後も他の港を使い続ける可能性があるためだ。

アメリカは中国から多くの品物を輸入している。アジア諸国からの積荷が到着するのが西海岸の港だが、ここ数か月間、西海岸の港湾労働者と雇用主との間で深刻な労働争議が起き、輸入品が港から各地に搬送されず小売店の商品が消える事態に陥っている。

西海岸の港湾労働者のストライキはこれまで注目されませんでしたが、この状態が長く続くと、アメリカ各地に輸入品が搬送されなくなってしまい末端の業者、特に小売業では販売する商品がなくなり多くの従業員がリストラされることになる。

米西海岸港湾の労使交渉が長引き、労働者側が約2カ月にわたり故意に作業を遅らせている影響が拡大しつつある。最大手ハンバーガーショップのフライドポテトM・Lサイズの販売が一時停止されたほかにも、食品、雑貨類などの輸出入手続きに10日程度の遅れが出ているもよう。交渉は難航し、ストライキや港湾封鎖のおそれも出てきた。

経済への打撃を食い止めるため、米小売業協会や米冷凍食品協会、西海岸各地の商工会議所など150以上の経済団体がオバマ大統領に介入を求めている。西海岸の港湾労働者の賃金改定は6年に一度の大イベント。2002年には西海岸の港湾が実際に封鎖され、経済に大きな打撃が出たため、当時のブッシュ大統領が強制解除に踏み切った。

西海岸は米国への輸入品の約4割が通過する貿易の要所だ。港湾が封鎖された場合の経済損失は1日20億ドル(約2400億円)規模といわれる。既に6割の荷主が迂回輸送を始めており、カナダのバンクーバーやパナマ運河を経由するニューヨークやボストンなど東海岸の港湾の利用を増やしている。ただ、東海岸向け運賃は上がり始めており他地域の受け入れ可能量にも限界がある。

農作物や玩具、雑貨類など単価が安く空輸に振り替えにくい輸送品に影響が出ている。米物流大手の広報担当は、人々が考えているより問題は大きいとのコメントを出した。

日本の11月の貿易統計では米国からの輸入が前年同月比3.3%減と6カ月ぶりに減少した。肉、野菜、果実、衣類・雑貨などが大幅に減った。米国への輸出も伸びが縮んだ。米国の小売り・ネット通販の大手は労使交渉による配達遅延の影響に備え、セール前倒しや在庫の積み増しで対応した。最大の商戦期の年末はなんとか乗り切った形だ。

労使交渉が長引く背景には、米経済の回復とともに高まる労働者の賃上げへの期待がある。港湾労働者に多い移民を中心に最低賃金の引き上げを求める動きがシアトルやカリフォルニアなど西海岸で広がっている。

西海岸の港の中でもロサンゼルス、ロングビーチは全米に入荷するコンテナの40%を支えており、特にこのエリアの組合の発言権は大きなものになっている。

労使交渉は昨年5月に始まり、ロサンゼルスやロングビーチを含む29の港湾で働く約2万人を対象としている。

コンサルティング会社では今回の問題により小売業界で今年、最大70億ドル(約8300億円)の損害が発生する可能性があると試算している。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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