第11回 エンジニアリングに見るロジスティックス

日本経済新聞に掲載される「私の履歴書」の先月の執筆者は大手エンジニアリング会社グループの代表だった。同氏は中興の祖とも言われているビジネスパースンだ。1961年に入社し約1万人を抱える大きな会社経営に貢献した。

筆者も長く石油精製事業に関与してきたことから同社との関係も深いものがある。履歴書の中で同氏が最も力を入れたのが海外開拓であるというのが印象的だった。昭和36年当時は同社も社員数500人規模で海外に夢を馳せる人は日本中探してもあまりいなかったであろう。

同氏はエンジニアリングの定義を自身に問うているのが面白い。答が難しいと前置きしながら以下の4点を述べた。

  • 設備を作る
  • 建設する
  • 設計する
  • プロジェクトを管理する

そして、一言にすると「相手国の役に立つ施設を多国籍に亘る多数の人や企業を使ってまとめあげ十全に完成させること」と言っている。下線を引いた十全とは、少しも欠けたところがないこと、十分に整っていて危なげのないことの意味。また、まとめあげるとは概念の段階から具体的な設計、資材や機器の購入、建設工事までを含めており業界の人達は次のように呼ぶ:

EPC
  1. Engineering
  2. Procurement
  3. Construction

筆者も同じようなエンジニアリング会社と一緒に全く新しい構造物、プラントに取り組み、当初の計画通り立ち上げた経験がある。その場合は主に2を担当したが、この3つの機能は縦割りに分けられるものでは決してない。また、欧米では多くの機能が技術屋によって果たされている。設計段階から購買機能が発揮されると早い内から製品やサービスを選択できサプライヤーとの関係も早期に樹立でき、信頼関係が生まれるというものだ。所詮、企業や人間の仕事は人間同士の信頼関係が大きく作用する。情報技術をうまく使えばより効率的に工事やプロジェクトを仕上げることができる。

下図はEPCを時系列的に並べ、各異能を分解したものである。3つのフェーズは右へ流れているが実は逆戻りもする。並行して流れると考えても良いが、最大の懸案事項は顧客の希望する納期である。これはプロジェクトの完成のことであり個々の購入資材の出荷時期ではない。しかしながら、個々の資機材が全体の計画表の中できちんと入ってこないとスケジュール全体が崩れることも容易にわかるため、プロキュアメント機能は大変重要なのである。

また、国内プロジェクトではあまり影響しないことではあるが、海外から資機材を購入することが増えてくる場合、更に海外での建設工事の場合では、個々の機器などの納期管理が非常に大切になってくる。納期管理を行うものはエキスペダイターと呼ばれサプライヤーの工場に出向き、現状の出荷状況や、機器製作状況を把握し、遅れている場合は催促したりするが、これとて何人でもできるわけではない。当該機器が何故遅れているのか、何処に遅れの主因があり、どうすれば計画通りに戻せるかを設計と建設部隊とで協議する。それには、サプライヤーとの信頼関係以上に社内の2つの部門との信頼関係も影響するのは当然である。いわゆる、社外と社内の両方の機能とのインターフェースの役目を果たすことが求められる。

ここでも忘れてはいけないのは物流機能である。国内では大方サプライヤー企業が相当気を使って出荷手配と顧客へ到着するまでの面倒をみるが、海外では輸入の場合を見ても多くの例ではFOB○○港渡しとなり、出荷港以降の危険負担は買手にあるため相当神経を使って建設プロジェクト現場まで輸送しなければならない。距離が長い場合、なおさらであるし、最適な輸送会社の選択はもとより、輸送中の事故までも買手の責任領域となる。米国では、テロ行為防止のための税関産業界提携プログラム(C-TPAT)が2003年、米政府CBP(税関・国境警備局)による監督のもと、国際供給網にともなう国家安全保障を強化する目的で認証プログラムが整備された。

この認証のC-TPATとは官民が協力してサプライ・チェ-ン及び国境での安全を強化するための官民共同イニシアティブであり、サプライチェーンの基本的所有者(輸入者、船会社、ブローカー、倉庫運営者、製造者)との緊密な協力を通じてのみ、税関は最高レベルの安全を提供できるという認識に基づいている。このイニシアティブを通して税関は企業に対しサプライチェーンに繋がる個々のビジネスパートナーにセキュリティ・ガイドラインを周知させ安全確保努力の一体性を確保するよう要請することになっている。

従って、プロジェクトにおける購買機能は物流機能を包含するものであり、資機材の発注行為が始点とすれば終点は納入と受入検査であるが、輸送中の監督責任は膨大なものであり、所掌範囲も国と比べることができないくらい広い訳である。テロ事件も重大であるが頻発するのは盗難である。せっかく苦労して出荷した資材が途中で盗まれることほど残念なことはなく、また出荷元の社員と現地で待っている建設現場の作業員の両方に申し訳が立たないからである。これは決して気が抜けない機能なのである。

古い話ではあるが、筆者は若い時に、タンザニア連合共和国のダルエスサラーム港から荷揚げされた日本の正月用品、食材を輸送途上で盗まれないようにダットサン(当時の自動車の名称)で貨車を追送、または随伴したことがある。当時からダルエスサラーム(Dar es Salaam)はタンザニア国で最大の都市でインド洋に面した港町、いわゆる鉄道など交通の中心地であった。1965年タンザニアのニエレレ大統領が中華人民共和国を訪れた際、鉄道建設を提案され、1970年に中華人民共和国、タンザニア、ザンビアの三国間でタンザン鉄道の建設が調印され、中華人民共和国はタンザニア、ザンビア両国に無利子で計4億320万ドルの借款を与え約2万人の中国人労働者と3万人以上の現地労働者の尽力の末、1976年7月タンザン鉄道が完成した。全長1859kmと言われている。

完成して間もない内は、タンザン鉄道も不安定であったことからトラック輸送も並行して検討され実行された、と記憶している。我々は、安全な都市、国家にいるとつい忘れがちな事故や事件を日本では自然災害などで多く経験するが、一方で資機材調達継続計画の中で最新のプランを立てた完成して間もない内は、タンザン鉄道も不安定であったことからトラック輸送も並行して検討され実行された、と記憶している。我々は、安全な都市、国家にいるとつい忘れがちな事故や事件を日本では自然災害などで多く経験するが、一方で資機材調達継続計画の中で最新のプランを立てたいものである。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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