特別編 霞が関のグローバル化

官僚たちのガラパゴス傾向極まる

今回のイスラム国によるテロ人質事件を見ていると如何に日本政府自体がグローバル化されていないかを思い知らされる。内向きで戦後、あまり積極的に努力してこなかった、または怠ってきた国は、海外に対して何も言えない状態となっている。これは現政権に対する批判では全くないことを最初に申しあげておく。

今回の犯行は中東のスタンダードに照らしても異常で、巨額の身代金を要求するなどは、非常識で想像を絶する野蛮行為であることは明白だ。そして、我が国は中東地域の平和と民生安定のため、非軍事的手段を通じて、一貫して国造りへの協力と人道支援を続けてきた事実が明確にある。但し、その効果、実態の検証と反省、フィードバックは若干心もとないかも知れない。日本人は儒教精神からか、人道支援やボランティアな行動などを自慢することはまずない。これは日本国内では当然で奥ゆかしいことだが世界的に見ると異様かも知れない。

有識者は今回の事件で幾つかの重要な示唆を書き出している。第一は、テロのグローバル化現象を踏まえ、日本の内外の日本人・日本企業の安全確保について今一度再点検すること。第二は、国際レベルの情報分析能力を備えた対外情報機関を、既存の官僚組織の枠の外に、早急に設置すること。第三は、国家安全保障会議と危機管理の分業体制を改めて構築すること。この様に3点発している。しかし、それで根本問題は解決するのか疑問だ。

筆者は日本政府、官僚のグローバル化人材育成が遅れていると指摘したい。現在の外務・警察の官僚的発想だけでは、国際的に通用するインテリジェンス・サービス(諜報活動)など作れないと思うからだ。次の文は少し古いが、内閣官房:グローバル人材育成推進会議で議論されて導き出されたものである。

抜粋する:

「グローバル化」とは、今日、様々な場面で多義的に用いられるが、総じて、(主に前世紀末以降の)情報通信・交通手段等の飛躍的な技術革新を背景として、政治・経済・社会等あらゆる分野で「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が国境を越えて高速移動し、金融や物流の市場のみならず人口・環境・エネルギー・公衆衛生等の諸課題への対応に至るまで、全地球的規模で捉えることが不可欠となった時代状況を指すものと理解される。我が国がこれからのグローバル化した世界の経済・社会の中にあって育成・活用していくべき「グローバル人材」の概念を整理すると、概ね、以下のような要素が含まれるものと考えられる。

  • 要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力
  • 要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感

  • 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

しごく誠に官僚らしい発想でかなり期待を込めて作られているのがわかる。今から5年ほど前の議事録だが、外務官僚はこの内容をどれくらい知っていたであろうか。まさか、縦割り組織で知らないとは言わないであろうが、NATO(No Action, Talk Only) つまり、言うだけで行動しない典型かもしれない。

作成した内閣府の人材はグローバル化しているかもしれないが、他の省庁にも宣伝、鼓舞すべきであったであろう。

筆者は大学の講義や講演でもグローバル化について話す機会が多いが、次のことを常に言っている:

  • I. 英欧ファーストネームを持つ
  • II. 欧米アジア人脈
  • III. 新興国語による意思伝達力

この3点は相互に深く関係することを十分に、事前に説明しないと一蹴されることがあるから非常に難儀である。

クリスチャンでもないのになぜファーストネームを持つ意味があるのか。それは、会話中に距離がぐっと縮まるからである。これは実際に経験しないとわからないことだ。そして、グローバル標準に近いと思っている。日本を除く、台湾、香港、タイ、インドネシア、フィリピンのアジア諸国では、ファーストネームでビジネスが進行していることも知っておく必要があるだろう。勿論、此処に挙げていない国もそうかもしれないが筆者は知見が無いだけに言及はしない。欧米人やアジア人、アフリカ、中東、中南米諸国でのビジネスの場で交渉相手などとファーストネームで呼び合うと友達になりやすいメリットがある。ある有名ゴルファーは英語をさっぱり話せないがファーストネームで呼び合う仲間が多かったせいで海外でも勝っている。最近のテニス豪州オープンでもテニス選手が活躍しているのを見てもわかるであろう。友達ができやすい環境を作ってくれるのがファーストネームであり馬鹿にできない有益な呼称なのである。友達とは人脈形成であり海外に多くの人脈が生まれるという大きな利点がある。さらに、新興国ビジネスではファーストネームで呼び合うことが常識としても一歩進んで彼らの使用する言葉で話すのがベターである。距離はもっと狭まりビジネス交渉でも有利になる。

今回のテロ人質事件でも外務官僚がどれだけ中東、また当該地域にファーストネームで呼べる友人を持っていたか知りたいものだ。電話会議でも米国大統領、英国首相、豪州首相などの間では英語が通じるという特殊な状況はあるもののファーストネームによるメリットは大きいと思う。現実に事件の渦中にいる場合、多くの友人を持ちとっさの時に頼れる人物を多く持つことは大切なのである。ガラケーのニッポンは頑なにラストネーム(いわゆる姓名のうちの姓)を使っているが、海外とのコミュニケーションではグローバル標準に変える時期が来ているかも知れない。この発想転換は世代格差が大きいだろうが、努力して頑張れば案外うまく行くかもしれない。

筆者は若い時に今回と似たような事件に遭遇した経験を持つ。中東でなくアフリカでの話だが、多くの戦争や紛争が起こっていた70年代である。あまり詳しく言いたくはないが、当時の感覚として次のように結論付けたことを思い出す:

  1. 日本政府の外務省高官はあてにならない(誤解無きように言うと、外務省本省からアフリカ国の領事館への予算が当時は寡少であったため邦人保護が不可能)
  2. 欧米系の政府領事館に頼る(当時、会社の採った実際の対策は米国総領事館へ逃げ込むことであった)
  3. 隣国へのルート開拓と良好な関係構築(国境に駐在、滞在していたため隣国への入国審査が容易であった)
  4. ユダヤ人サプライヤーとの情報交換(現実にビジネスを牛耳っていたユダヤ系ヨーロッパ商人、取引先から多くの裏情報を得ていた;当時はインターネットなどなくテレックスのみが命綱)
  5. 旧宗主国から来ていた役人や軍人との交流が大切(日本人同士だけで交流するのでなく当該国に長く住んでいるヨーロッパ人と公私ともに付き合うこと;ボーリング、ビリヤード、ラグビー、格闘技などで友好試合に興ずる)

ご覧のとおり、アフリカは広大な大陸であるが、今や暗黒大陸とは誰も呼ばないだろう。しかしながら多くの未知の産物も多いし同様に未知の多くの事象が存在する。ヨーロッパ人が夢見て開拓した歴史はあるが多くの国は自主的に民主化を進め国連の指示にも従っているように見える。1960-70年代は日本人にとって大志を抱かせる大陸であったが、今から思うと時期尚早であったのかも知れない。資源に乏しい日本は引き続き外交に力を入れて友好に新興国、途上国に働き掛けるべきだが、駐在員や法人の安全確保には、霞が関の人たちのマインドセット、つまりグローバル化が必要だと感じている。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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