特別編 最大手ハンバーガーショップがポテト販売を一時Sサイズだけに

米国の港湾労使紛争で原料が調達難

またもや、年末の驚きのニュースが入ってきた。最大手ハンバーガーショップが2014年12月15日、サイドメニューのポテトの販売を、17日から一時的にSサイズのみに限定すると発表したことだ。これを受け、ポテトセット15種類について、ポテトをMからSサイズに変え、価格を50~130円引き下げると言う。窮地に陥っている同社だが、この際、値下げなどどうでも良い。消費者として、原因を突き止め対応策を出すことだ。マスコミ取材によると、米西海岸の港湾で、港湾運営会社と作業員との間の労使交渉が長期化しており、ポテトの調達が難しくなっていることを受けた措置だと言うが、これも、チキンナゲットなど中国製の鶏肉商品8種類の販売を中止した際にコメントしたのと同じ失態で、他人任せを露呈した同社の実態だろう。

港湾ストなど労使紛争が原因で食材の需給が行き詰るケースは初めてというが、初めてのケースは世間にわんさとある。経済がグローバル化している上に同社は世界でも有数のグローバル企業を自負していることから、この言い訳はサプライチェーンを知る人間には驚きを越えてあきれるばかりだ。

筆者は、講義で学生に対し「プロフェッショナルは言い訳をすべきでない」と諭している。プロ、つまりそれを生業とし、そして生活している者はあらゆるリスクに耐えねばならず、責任を他人に転嫁しても何も始まらず、また収束しないことを知っているからだ。最大手ハンバーガーショップは緊急対策として、数週間、ポテト1000トン超を航空便で輸入するなどの対応をとっているとしているが、十分な数量を確保できないという。バイヤー、消費者は理由や原因を聞くのは少しだけで良い、抜本的な対策を望み、何か適切なアドバイスを期待しているのだ。さらに同社は、安定調達のめどがつくまで、ポテトの減量を続けるとしている。

リスク管理と言う用語はリスクマネジメントと言い方を変えて世間で流通しているが、いろいろな企業を回ると、どうも言葉だけが独り歩きしているようだ。基本は企業を取り巻く危機や危険、被災を整理することから始まる。一般には以下の4種類に分けることができる。

種類

概要

1

自然災害

気候上の災害(洪水、干ばつ)
地学的な災害(地震、津波、火山噴火)
生物的な災害(感染症の大流行)

2

技術的災害

原子力放射能漏れやインフラの崩壊など産業的災害、
飛行機、鉄道などの交通上の災害や事故

3

経済危機

金融危機、通貨危機、債務危機
ハイパーインフレ

4

戦争

暴力的災害

今回の案件は経済ではなく技術的災害に当たる。鉄道などの交通上の災害や事故、港湾労働者のストライキも含まれよう。欧米や豪州では港湾ストは激しくなっている現状がある。また、業種について深堀すると以下のリスクに収束される。

業 種

着目されるリスク

製造業

火災・破裂爆発、労災事故、PL、リコール、地震、顧客のクレーム

水産・食品加工

食中毒、異物混入、PL、リコール、顧客のクレーム

建設・建築

労働災害、製造保証、地盤沈下・崩壊

運輸・流通

労働災害、物流事故(配送遅延)

システム・コンテンツ

ネットワーク断絶、ハッカー対策、知的財産権侵害

卸・小売業

火災、第三者賠償、物流事故(配送遅延)

最大手ハンバーガーショップはレストランチェーンに入るが専門家に言わせるとIT産業とされている。どこでもITを取り入れない一般消費者相手の産業はないほど需要予測や物流、マーケティングに情報システムが活用されている。米国の会社である故、更にその浸透度合いは大きいかも知れない。

ここで同社のフライドポテトの原料を考察してみたい。

  • ジャガイモ、キャノーラオイル、水素添加大豆油、ベニバナ油、自然調味料(植物由来)、ブドウ糖、酸性ピロリン酸ナトリウム(色の保持)、クエン酸(保存料)、ポリジメチルシロキサン(消泡剤)
  • 揚げ油(キャノーラオイル、コーン油、大豆油、水素添加大豆油、THBQ :tert-ブチルヒドロキノン、クエン酸、ポリジメチルシロキサン)
  • 調味料(ケイアルミン酸ナトリウム、ブドウ糖、ヨウ化カリウム)
  • 遺伝子組み換えのもの(キャノーラオイル、コーン油、大豆油)や水素添加されたもの(大豆油)、化学的保存料や消泡剤(THBQ、クエン酸、ポリジメチルシロキサン)、そして人工着色料(酸性ピロリン酸ナトリウム)など。

同社のポテトにこれだけの原料が含まれているのを知っている人など、どれほどいるだろう。ネットでは、最大手ハンバーガーショップによる情報開示キャンペーン動画サイトを駆使して懸命にやっているが米国でも逆効果が出ているらしい。開示すればするほど消費者にマイナスイメージを与えると言う負のスパイラルかも知れない。サプライチェーン観点から言うと、原料が入ってこないから製品が創れませんと言う幼稚な発言をした広報担当、それを許した経営層に脱帽する。企業の仕入れ担当は「売れません」と言っても「買えません」とは言えないはずだ。購買部の新入部員は、最初に、Q-C-Dを学ぶが、その前に既存資材を切らすなと叩き込まれる。倉庫にて実習する期間で、在庫管理の大切さと品質劣化などを目撃し、不良在庫品の処理方法を観察する。今から考えると当時は倉庫番とか言われて揶揄されたが、倉庫内で学ぶことは非常に多いのだ。

1)入荷原料の検収、検品、品質確認:正しいものが入ってきたか?
2)倉庫内の空間確保:
3)在庫品の盗難防止、劣化の見極め
4)社内需要者への適度な払い出し
5)不良品、陳腐化資材の処分:社内転用、社外売却などで利益を出す
6)在庫せずに第三者にさせる方法

当時は在庫ゼロが流行であり、在庫は「罪子」とか呼ばれた。大震災や大災害を経験した企業は在庫の大切さを再認識したはずだ。

倉庫番をしながら感じたことは、消費者(社内外とも)に安定的に原材料を仕入れ供給すること、原料を切らしてはいけないこと、在庫切れの言い訳してはいけないこと、消費者に安心、安全を伝えることだった。

最大手ハンバーガーショップは、いわゆる購買調達の基本原則から完全にはみ出した発言をしたが、それは、IT産業だからかと疑ってしまう。正しく調理したものをお客さんに正しく届ける、客が満足してお金を払う、これだけのことだが、最後のお金をもらうことだけに意識が行き過ぎて最初の3つのステップを忘れている食堂経営者が多いと言うことか。

 ① 正しく調理したもの=安全で安定した品質の原材料を調達、仕入れ、調理する
 ② お客さんに正しく届ける=納期遅延することなく適時に(待たせることなく)提供する
 ③ 客が満足して=注文した通りの物、または期待以上の物が出てくれば客は興奮し喜ぶ
 ④ お金を払う=米国ではチップが増えることもある

下図は同社が明示した「Made for you:お客様のために早く提供しましょう」キャンペーンの一部で、これまで50秒かかっていたものを30秒に短縮したという説明文。ここでは、製造の部分で材料が切れたということだ。材料が入らなければ調理ができないのは明白で、客に提供すらできない。欧米企業にありがちな顧客を顧みずに自社の論理で突っ走る組織は、突然価格を上げたり、突如として補修部品の供給を停止することがある。相手のことはお構いなしに決定する、しかも突然発表する。外資系企業が日本に進出する際に「郷に入っては郷に従え」流を貫くというが真っ赤な嘘だ。筆者が思うに、背景には、社員の定着率が低い、つまり、社員が頻繁に辞めていくため、引継ぎが遅れ(基本的に引き継ぎと言う習慣はない)、現行の顧客が蔑ろにされているからだろう。

大手自動車メーカーは生産管理で名を馳せたが、昔から「愚直にモノづくりをする」しかも、徹底することを社風としている。欧米企業では社内に少数民族や移民も多いため、同じことを何度も言ったり、決して製造工程の一部を飛ばすことを許していない。いわゆる阿吽の呼吸では済まないことを知っているからこそ徹底して同じことをやらせる。大手自動車メーカーの場合、頭のいい社員は「工程の無駄、繰り返し時間のロス、作業のダブり」を訴えて改善を助長する。これが日本と欧米との差だと感じている。但し、これが日本から一歩出ると通じないことも知るべきだろう。

このコラムでは最大手ハンバーガーショップの原料の安定調達確保から問題点を発したが、言いたかったことを要約すると以下の通りとなる:

  1. 購買調達の基本は、安定供給の確保である。
  2. 調達できないという言い訳は通用しない。
  3. 普段から複数の手段を考慮し確保し反省・改善する。
  4. 常に製品や商品を使う、消費する立場で考える。
  5. 顧客満足は社内と社外の両方を意識する。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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