特別編 外資に翻弄される日本人社員は幸せか?

先月来、数回同じような経験をしたので、是非述べておきたい。海外進出を志向する日本企業にとって少しでも参考になれば幸甚である。

■フランス系外資企業

フランスに本拠を置く自動車部品メーカーの現役社員とのインタビュー:

1)毎日残業が続き、へとへとです。自分は製造部門の管理職ですが、すぐ上に日本人、部門長はフランス人ですが意思疎通は正直言ってうまく行っていません。英語力ではなく、仕事への取り組みと目標管理のやり方が全く違うのです。この感覚は経験しないとわからないでしょうがなかなか分かってもらえないため、日本人社員は常に悶々としています。仏人のいうことは正論が多いため中々反論できません。通訳を介して話しても結論が出ないため、結局、日本人同士で適当にやるしかないのです。

2)日本企業に入ったつもりが、今やドイツを経てフランスの企業に成った。上司のフランス人駐在員は出社は早いが退社も早く、残された日本人だけが従来通りサービス残業を繰り返している。休暇も2国の社員間で明確に分かれている。日本人は休暇を取らないという常識を逆手に取りフランス人のみが2か月の休暇を取る。自分の国では4週間だが駐在すると倍に増えるとのこと。何でもよいが日本人との歴然とした差である。仕事に仕方が全く異なるのも面白い。元々日系企業のため重厚長大型の仕事振りでやってきたが、外資は変えようとしない。日本人は仕事が好きだから勝手に残っているという噂を聞き、これ幸いとばかりに目標ばかり与えて叱咤激励するが方法論がないため日仏の関係は常にぎくしゃくするばかりだ。

3)フランスからの駐在員は現場を知らなさすぎる。個室内で一所懸命に報告書らしきものを書いている。役員会にも日本人が若干名出ているが我々にはあまり報告がない。月末になると、あれを出せ、これを出せと言って緊急の用事が増える。恐らく、パリ本社へレポートするからであろうが、毎月同じことの繰り返しで、もっと早くから計画的に指示して欲しいものだ。我々が作った資料に加筆しているらしいが結果が返ってこないので本社へ何を出してどう処理しているのか不明なことが多い。

フランスから送り出されてくる駐在員も特に原国で教育されたグローバルな人材でなく急遽採用された高校の数学の教員もいたという。エリートのフランス人が先進国の日本とは言え極東アジアへ行くのを嫌う(特に夫人と子女)のは当然かも知れない。平均的なフランス人は英米と違い、文化や言語の異なる国に行くのを極端に避ける。ヨーロッパでのキャリアパスに遅れを取ること以上に現地に馴染めない人たちが多くいたことを聞いているからだ。日本の文化文明は東南アジアやアフリカに比べて進んでいるが、閉鎖的、娯楽が少ない、女性差別社会という烙印を押されているため、ラテンに近い中南米の方を好む傾向がある。漫画ブームやコスプレなどソフトカルチャーがフランスで盛んだというのは、ほんの一部であって一般のフランス人には日本は依然としてアジアの一国であることに何の違いもないのである。

日本国内で非常に大きな存在感のあった会社が次々と欧州勢に飲まれ、そして悪いことに日本人社員の待遇が改善されていない。この意味はおよそ国内の外資系企業は残業もなく定時で帰宅でき育児休暇等女性社員にやさしいのが当然だが、その現実からは遠いと出ている。勿論外資系の外国人女性駐在員には手厚い待遇を施している。これは全くの差別雇用形態でしかないだろう。

■ドイツ系外資企業

ある外資企業のドイツ人駐在員の話:

1)日本人は残業が好きと聞いていたがその通りだった

2)彼等は喫煙室での滞留時間が非常に多い

3)やたらと我々外人駐在員には理解不能な会議が多い

4)日本会社は個室体制でないため周りが騒がしく、個々の社員が集中して仕事ができない環境にわざと自分を置いているようだ

5)日本人間の雑談がやたらと多いのが目につく

欧州から派遣されてきた駐在員は本社からのミッションとゴールを誠実に守り遂行し本社に報告することを義務としている。また、目標達成ならば、その過程にこだわらない習慣があるが、日本人は工程やプロセスに気を使い疲れ果てた結果、ゴールを見失い、できない言い訳の羅列に終始する。一度でも外資系に勤務したことのある人ならわかるが、外資の幹部は目標を明確にして社員はその遂行に励むという構図がある。ボトムアップは期待していない、ボトム社員にはそれなりの給与しか払っていないからだ。役員になってから、いわゆる「幹部アップ」に務めれば良い。それが日系でしばらくボトムアップに慣れてくると急に外資に移って褒められようと頑張っても評価されないのは外資では職位に対する待遇しかないからだ。

更に言うと、外資にはJob descriptionという伝家の宝刀がある。内容は各社ばらばらだが決められた職務によって報酬が決まり昇格が約束されるというもの。筆者は外資では役員を務めていたためJDはなかったが明確な目標を持たされ社内説得に苦労した口だ。本部からの目標をかみ砕いて部下に伝えることは日系社員を相手にするとかなり骨の折れる仕事だ。ここで感じたのは国内の外資系では駐在員幹部と従来の日本人社員との狭間でどう生き残れるか、いや意思疎通を円滑にできるかである。外国人駐在社員と日本人社員の混合の会議では英語が使われるが、後者の社員は頷くだけで発言しないため、大筋合意するが、後になって大きな誤解が発覚し相互不信は最高潮に達するというわけだ。

 

ことほど左様に、現下の日本企業はグローバル化に翻弄されている感がある。外資系企業の買収、外資への売却、海外における現地企業買収、海外への進出で現地子会社設立、など善は急げというように突き進んでいるように見えるが、そこに企業戦略、事業戦略は明確にあるのか。失敗にこそ大きな果実があるというように多くの企業が海外進出で失敗している。それらは外務省やジェトロなどが押さえているはずだが表に出てこないため、同じ失敗を繰り返す企業が少なからずいるわけだ。

意思疎通を英語でコミュニ―ションと言うが殆どの日系企業は後者を好んで使う一方で定義が全くわかっていない。相手と意思を交換するには言語が必要だが、お互いに相手から見た外国語を使うのはどうだろうか。英米人が英語でなく第三国語(スペイン語やフランス語;小学校で習っているはず)、ヨーロッパ人は英語かフランス語で日本人と意思疎通を測れば良い。お互いに言語にハンディを持つことで、より真剣に意思を交換するように努力するからだ。通訳を解する場合も第三国語が望ましい。また声も大切で常に大きな声を出すことだ。自信たっぷりの口調は説得力を持たせ相手も納得する。

余談であるが、2000年初期の大手自動車メーカーのフランス人幹部との会話では流暢な英語で相手をぎゃふんと言わせた人間がいる。往々にして典型的なフランス人は英語を嫌い、理解していても使わない人が多い。従って理解しているため頷くが反論が英語で出ない。そこを逆手に取り徹底的に理詰めで説き伏せた。欧米人は一度「はい;イエス;ウイ」と言うと撤回しないのが美徳である。そしてその通りに動くから仕事は、実にはかどったらしい。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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