第5回 変わらない日本の男性ビジネス社会

東京都議会で晩婚化対策を質問した女性都議会議員が女性蔑視のヤジを浴びた問題で他にも複数の議員が立て続けにヤジを飛ばしていたことが分かったという報道を、たまたま出張先の欧州内で聞き知った。予想されたことでもあるが都議の品格、同時に国会議員も似たようなものであろうと思った。欧州でも親しい知人と本件について、話したところ一笑に付された。つまり、さもありなんということで、日本女性を伴侶に持つフランス人男性の経験している日本であり、日本社会における女性の処遇が依然としてイスラム社会を感じさせるくらい低く変わらないということだ。

つまり女性が社会進出を妨げられている、大きな違いは、回教徒にはイスラム教の聖典である『コーラン』があり、歴史的に女性の活動がかなりの度合いで規制されているため理解が出来るかも知れない一方で、日本社会は男性が社会的パワーだけで牛耳っているという点だ。

先週、仏パリ大学商科大学院ESSECで教鞭をとっていた時、グローバル・サプライチェーン学部の半数以上の学生は女性であったため、敢えて特定の問題に触れなかったが、ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM: gender empowerment measure)の統計資料(脚注1参照)を見せて若干議論した。この指数は国連開発計画が導入した女性の政治参加や経済界における活躍、意思決定に参加できるかどうかを表すもので、日本は42位にランクされた実績がある。最高位は北欧諸国が占めている。

ある学生から、日本は女性の社会進出が進まない割には出生率が落ちて来ていますね、という痛い発言もあった。フランスでは男性も女性も結婚していようがいまいが、せっかく積み上げてきた職業、職務を途中で断念する考えは全くない。因みに、昨今ではパックス(脚注2参照)が当たり前のようになっており学生結婚という言葉は死語になりつつある。私の学生は年齢層30歳前後で社会人経験を持つものが多いがほぼ100%民事連帯契約制度の活用者である。

例えば、どちらかが転勤で地方に赴任する場合、選択肢は別居という形をとらずに実施することが多い。男女それぞれがプロとしての職業を持っているからだ。実際には、これは高学歴者にあてはまることであり一般の人すべてというわけではないが安易に単身赴任という形を採らないのが特徴だ。人生設計や働き方に多様性が社会的に確立しているからだろう。

話を元に戻すと、女性が働けない環境を作っている根源は

  1. 育児施設といったインフラの未整備
  2. 戦前からの教育理念の踏襲(女子大の存在:長い歴史の中で培ってきた「良妻賢母」豊かな人間性に裏打ちされた家庭人という概念の基盤など)
  3. 男性社会で築き上げられたビジネスの世界をいきなり男女平等というマインドセットが不可能という実態
  4. 初等教育における間違った男女平等は政府の目指す男女共同参画に合致しない事実
 
などだが、じっくりと時間を掛けて再考すれば他にもどんどん出てくるだろう。

グローバル視点で経営を考える時、国内と桁が違うほどビジネス社会の多様性にぶつかることが多い。アセアン諸国での日系企業の活躍を見る時、女性の社会進出が進んでいる国ばかり目につく。そういう国で企業が事業を展開する時、現場オペレーションする際に、日本国内では気が付かない、注意しない事象に出くわす。それは、女性を含む多様な人材との出会いである。

グローバルと言っても日系企業がいきなりアフリカやアマゾンに行くのは少し先であろう。従って当面はアジア諸国が対象になり、中国からアセアン諸国、またインド・パキスタン・バングラデシュへと今後伸びていくであろう。つまりイスラム圏とヒンドゥー圏が対象になるとすれば、女性プラス宗教という要素が加わる。この要素がアジアのサプライチェーンを動かすとなれば事業者たるものは大いに勉強しなければならない。

日本語のセクハラやパワハラ、最近ではマタハラ、アカハラなどハラスメントばかりがマスコミで取り上げられ日本のコミュニティにも浸透してきたようだが、まだまだ逃げ道が多くあるという過去の男社会の甘さがある。しかしながら、アジアでは真逆であることを知った上で海外事業の経営に乗り出して欲しい。ヒト・モノ・カネの内、人が物を動かすことを忘れずに。

【脚注1】

GEM: Gender Empowerment Measure; how much progress women have made in terms of entering the areas of politics and business.

ジェンダー・エンパワーメント指数(英語:gender empowerment measure、略称:GEM)、は、女性の政治参加や経済界における活躍、意思決定に参加できるかどうかを表す指数。国連開発計画(UNDP)が導入した。

GGI(ジェンダー・ギャップ指数)

備考)国連開発計画(UNDP)「人間開発報告書」及び世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」より内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Officeが作成

男女共同参画に関する国際的な指数:101位/135か国

2012年

順位

国名

GGI

1

アイスランド

0.864

2

フィンランド

0.845

3

ノルウェー

0.840

4

スウェーデン

0.816

5

アイルランド

0.784

6

ニュージーランド

0.781

7

デンマーク

0.778

8

フィリピン

0.776

-

-

-

101

日本

0.653

経済、教育、保健、政治の分野毎に各使用データをウェイト付けして総合値を算出。その分野毎総合値を単純平均してジェンダー・ギャップ指数を算出。

0が完全不平等、1が完全平等。

【脚注2】

PACS(パックス:Pacte Civil de Solidarité)

民事連帯契約:1999年にフランスの民法改正により認められた「同性または異性の成人2名による共同生活を結ぶために締結される契約」(フランス民法第515-1条)。異性あるいは同性のカップルが、婚姻より規則が緩く同棲よりも法的権利などをより享受できる、新しい家族組織を国家として容認する制度。1999年にフランスで制定されて以降、欧州各国に広まりつつある。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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