第3回 経営におけるサプライチェーンマネジメント

民間企業における社会的責任の中に「グリーン」という環境に優しい概念が含まれています。これは、ソーシャル(社会)、エシカル(倫理的)、エコロジカル(環境)なビジネスの総称の一つです。ソーシャル・イノベーションを 誘発する場合に、戦後から環境問題で苦労してきた日本企業は世界でも優位に立っています。つまり、日本企業が苦労してきた分、逆に環境対応をアピールし、市場がこれを評価する時代が来ました。国内でも先進的な企業がこぞって環境報告書を出すようになり、環境の中味が益々洗練され、企業は環境面での努力や実績を一層アピールできるようになり、それこそピンチをチャンスに変えてきた歴史があります。市場も企業の積極的な訴えに応えようと努めました。例えば、現在多くの企業が発行する環境報告書やCSRレポートは企業評価に欠かせない存在となっていますが、よく見ると結構な量のイノベーションが確認できます。それは、環境保全の巧拙によって環境汚染のような潜在的なリスクの認知もありますが、環境商品を通して社会に還元しようとする動きです。

筆者は仕事柄ヨーロッパに出掛けることが多いのですが、本土における環境対策は日本人でさえも厳しいと感じることが少なくありません。次のような欧州指令は常時、更新されており日系企業も気が気ではないのです。

環境保護への取り組み

日本人が特に気に掛けるのは、梱包や包装でしょう。外国人が日本に来てまず驚くのはデパートなどの過剰とも言える包装です。丸出しで良いからその分引いてくれといった東ヨーロッパ人客は道理に適っているかも知れません。2009年1月に欧州において発効されたCLP規則では、製品を輸入するEU域内の輸入者が分類表示の届出を行うことになっていて、届出のためには正しい分類(C)や製品中の物質に関する分類表示(L)、およびEU域内に向けたMSDS等による正しい情報伝達が不可欠となります。

CLP規則とは、EUにおいて2008年12月31日に公示された物質と混合物そして火薬等の爆発性のある成形品の分類(Classification)、表示(Labelling)および包装(Packaging)に関する規則。EUの既存の分類・包装そして表示システムを定めた「危険な物質の分類、包装および表示に関する指令(67/548/EEC)」と「危険な調剤の分類、包装および表示に関する指令(1999/45/EC)」を統合したもので国連が勧告している「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」を導入する形で制定されている。 化学物質の危険性分類、包装、表示は化学物質を安全に輸送・使用するのに必要不可欠なものでCLP規則は以下の義務をEU域内の製造者および輸入者(供給者)に課す。

 化学物質(物質と混合物)の危険性を分類する為の基準による分類の義務

 化学物質の表示(ラベル表示)の義務

 化学物質の安全な梱包の義務

制定の目的であるが、EU域内市場の人間の健康と環境の高レベルの保護を実行することと、同時に基準の調和によるEU域内における化学物質の自由な移動を目的としてCLP規則は制定された。

ご存知のように欧米でもトヨタ生産方式が浸透していますが、その中で「五つのムダ」というものがあり、過剰方法や梱包は何故、無駄にならないのかという疑問もよく呈されます。卑近なところでは、フランスのパン屋ではバゲットを焼いた状態でそのまま渡すことがあります。一方、日本のパン屋では、フランスパンを一旦紙で包みこみ、それを小さな袋に挿入し、その後、手提げ袋に入れて客に手渡すのが当たり前になっています。勿論、また文字通り梱包や包装は物流業務の一環で重要な作業であり、日本工業規格 (JIS) では、包装とは『物品の輸送、保管などにあたって価値及び状態を保護するために適切な材料、容器などを物品に施す技術および施した状態のことである』と定義しています。適切な梱包や包装は決して無駄ではないのですが欧州指令などを参考にして、また環境保護という観点を再認識した上で考えるべきものと思っています。

もう一つ、EU ETS (European Union Emission Trading Scheme、欧州連合域内排出量取引制度)というものがあります。EU域内の気候変動に対する政策の柱として古く2005年1月から導入されている、域内での二酸化炭素 (CO2)排出量取引制度のことです。京都議定書の排出削減目標を達成するための取組みで、階層別に目標値を定めEU全域で約1万2,000の施設が対象になり、主に発電、鉄鋼、セメント、化学製品等、エネルギー集約部門が標的とされているようです。 取り敢えずEUの欧州委員会は2006年にEU域内を離着陸する航空機を対象に温室効果ガスの排出規制を導入することを決め、EU域内の路線を飛ぶ航空機(EU域内の国内線および国際線)は2011年から、EU域内の空港を発着してEU域外と結ぶ全ての国際線の航空機には2012年から適用されています。日本を含むアジア、また北米の航空機会社も例外ではないのです。この新規制は現在、欧州連合内で行われている他産業での温室効果ガス排出量削減のための「排出量取引制度」に航空を含める形となり、航空会社に2004~2006年の二酸化炭素(CO2)排出量の平均値を基準とした排出枠を割り当てるものです。割当てを越える温暖化ガスを排出する航空会社にとって負担になるとの見方があり、EU域外から強い反対意見が出ていました。このとおり、EUの環境規制には多くの種類があり、規制対象は化学、自動車、電気・電子、玩具など幅広い業種に及んできて、日本の関係業界も無関心ではいられません。規制内容などの詳細については、随時見直しや修正が行われていますので、常に動向に注意することが肝要と思います。

SCMの課題

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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