第1回 経営におけるサプライチェーンマネジメント

連載の初回のコラムとしてサプライチェーン経営の初歩から始めます。と言いますのは、最近企業人の間で横文字が横行、濫用されていて、中には現実の意味を知らないままに日常業務上で使っているケースを垣間見るからです。勿論、用語の定義は会社によって異なることもありますが、此処では一般にグローバル社会で使われている、むしろ欧米で通用するという前提で定義づけしたいと思います。アジア諸国も概ね欧米の定義を借用していますので、現代では市民権を得ているかも知れません。下の図1は私の主宰する研究会で議論したたたき台ですが、現在のサプライチェーンの傾向(トレンド)を表すものです。

サプライチェーンを取り巻く潮流

企業では製造、非製造にかかわらずサプライチェーンの動きを見るとビジネスの実態がわかるというのがグローバル視点での広い認識となっているようです。この図1では現代の企業を取り巻く七つの外部要因を配置しています。横文字だらけですが、本コラムにて一つずつ解き明かし、読者の皆さんに紹介していきます。

最初のCSRは、企業の社会的責任として2000年くらいから日本でも取り上げられてきました。解り易く言うと企業は儲けと同時に社会貢献せよというもので法人税を納めるだけでなく社会と市民に有益なこともしましょうという考えです。これは今後グローバル化する経済では最重要な概念となるでしょう。これまでは国内需要だけに依存していれば良かったのですが、アジアなどの新興国が本格的に消費し出すと日系も外へ出て行かざるを得ないわけです。そこでは組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、安全衛生、コミュニティ参画を国内以上に意識しないといけないのです。特に企業統治と言われるガバナンスは日本の比ではなく真剣度を求められます。企業の存亡がかかると言っても過言ではありません。

本題のサプライチェーンについて、ごく簡単におさらいをしておきます。サプライチェーンとは、「供給連鎖」と日本語訳されますが、今や英語のまま使われ、表記されることが多くなりました。いまさら、他人に聞けないほど一般化したようです。これは、通常のビジネス取引の流れについて、情報技術を活用して管理する経営手法であり、また、原材料・部品の調達から在庫、消費者までの製品供給を総合的に管理する手法とも言えるわけです。学術的には、サプライチェーンは米国学者マイケル・ポーターが1980年代半ばに「競争優位の戦略」で提唱した価値連鎖(バリューチェーン)と同じようなものと考えて良いでしょう。つまり、そのビジネスプロセスの流れにおいて、それぞれの連鎖で付加価値が追加されていくという視点から生まれた用語です。当時は、主として社内の管理が重要視されましたが、その後、サプライヤー、メーカー、卸売業者、小売業者、消費者までを包括した活動で社外と社内の両方に焦点を置いたものに発展しました。ここから価値連鎖はサプライチェーンと呼ばれるようになりました。また、生産財などの製品の特性によっては、調達・製造・配送という業務の流れは一企業で途切れることなく、例えば、サプライヤーのサプライヤー(サブサプライヤー)から顧客の顧客(最終顧客)へとつながっていくものもあります。サプライチェーンの概念には、このような更なる企業同士のつながりも含まれていくのです。

サプライチェーン・マネージメントSCM:従来と今後の流通体系

サプライチェーン・マネージメントSCM:従来と今後の流通体系

出所:VCPC事務局

図2は、従来の取引の流通形態と新しい形態を示すものですが、連鎖(くさり)は文字通り繋がっており単独の鎖になっていない点に注目すべきです。つまり、個別でなく全体最適を目指すものであり、究極の最終ユーザー、消費者、顧客の満足にあるというのが従来の経営視点の違いであります。

本件に関し、日本社会と米国社会との間で最大で且つ根本的な違いは何でしょうか。社内からの視点と社外からの視点という両方の捉え方にヒントがあります。また、この点が、SCM経営論が日本社会でうまく機能していない原因でもあるのです。

サプライヤーとカスタマー間の供給連鎖

出所:Institute for Supply Management 米サプライマネジメント協会

言うまでもなく社外には、供給するサプライヤーがいて、製品やサービスを届ける最終顧客・消費者がいます。社内の方は生産現場に象徴されます。これは特に新しい概念でもなく古くからの生産形態ですが、情報技術の発達と顧客満足の2点が加わり経営の仕方がより明確になり可視化されるようになったのです。米国では実にシンプルで余分な「調整、後付け、修正」を極力省きます。そして全体の流れをコンパクトに短くしていわゆるリードタイム(生産時間)を短縮し顧客に迅速に届けて満足を競います。社内の在庫も極力少なくします。日本の会社の場合は、SCMの概念を理解していても実践には社内の多くの関係者が関与し却って複雑になることが多く本来の単純、短縮からほど遠くなります。これがグローバル企業との違いかどうか分かりませんが調査研究の中で明らかにできればと思っています。

著者紹介

上原 修 (うえはら おさむ)CPSM C.P.M. MBA JGA
特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM
仏ESSECビジネススクール 国際調達・特任教授
法政大学経営大学院サプライチェーン兼任講師
東京工業大学大学院MOTサプライチェーン戦略スクール講師

略歴
大学卒業後、日本鉱業株式会社(現:JX日鉱日石ホールディングス株式会社)にて購買部に勤務、コンゴ鉱山開発会社駐在、本社国際購買担当部長、日鉱ニューヨーク事務所長歴任。米系外資(株)アルファパーチェスにて常務・購買本部長を経て、米ISM日本代表に就任。MBA経営情報学修士。米グローバルANSI購買資格(C.P.M.) 及びグローバル調達経営資格(CPSM)取得。国土交通省通訳案内業免許取得。フランス政府留学ポアチエ大学Diplome学位取得。企業留学仏ブザンソン大学文化教養学部修了Diplome学位取得 一橋大学伊藤研究室ビジネススクール修了。

主な著書
『枯渇性資源の安定調達戦略』(単独著)2011日刊工業新聞社、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(共著)2013白桃書房、『フランス人の流儀-日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(共著)2012大修館書店、『ISO-26000実践ガイド』(共著)2011中央経済社、『グローバル戦略調達経営』(単独著)2008日本規格協会、『購買・調達の実際』(単独著)2007日本経済新聞、『やさしいCSRイニシアティブ』(共著)2007日本規格協会

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